連休中の日経記事から

連休前と連休中に買った日経記事に「熟練外国人現場の中核に」として、在留資格の「特定技能」制度が拡充されるというニュースが取り上げられていた。経済新聞の記事であることから、人権という切り口ではなく「雇用、人手不足」という視点から記事はまとめられている。

 現在、労働力世代の急速な減少、特に団塊の世代が70代後半に差し掛かり、本格的に労働市場から退出しようとしている。それを受けてここ数年、特に中小企業で人手不足が深刻化している。この傾向はさらに強まるだろう。

少し前に松本の多文化共生についての講演会で、人手不足を補うために国(主に厚労省)が「女性」「高齢者」の労働力率を高めることと同時に「外国人労働者」の拡大を図ることを考えている、と聞いた。

 

日経の記事は「外国人労働者をどのように受け入れたらよいか」「それに付随する問題とは何か」「行政(自治体)が果たすべき役割とは」といった内容を中心とした記事になっている。

 

 いわゆる「外国人労働者」と聞いて一般の方々がイメージする在留資格は「技能実習」と「特定技能」の二つがあるだろう。他に「高度人材」があるが、あまり知られていない。

 

 「技能実習」は事実上の外国人労働者だが「優れた日本の技術を途上国の人々が学ぶ」という建前があり労働にはさまざまな制約が課されている。それに比べて「特定技能」は就労については自由度が高い。しかし、それでも分野が限られており、家族の帯同ができない。

 

 今回の記事はこの特定技能の制約を緩める方向で国が制度を整備しつつある、という話題だ。人間を雇っている以上就労が長期化すれば「家族」の問題は必ず起きる。元々外国人労働者の一番の苦しみは、長期間母国に子どもや奥さんを置いてくることによる家族へのダメージや、独身で来日した若者が結婚出産が極めて困難な制度設計となっている。

 

 これまでの「特定技能」は正式には「特定技能1号」と言い、最長でも5年しか滞在できなかった。対象分野も外食や食料品製造業など12分野に限られている。今、制度が始まった24年頃に滞在を始めた方々は随時帰国し始めている。経験を積み資格などを取得した熟練労働者を失うのは企業には痛手であることは想像に難くない。

 

 これに対して今、非常に少数だが導入されている「特定技能2号」の資格は長期就労が可能な資格だ。この制度の目的は1号の「5年」に比べて長期滞在を可能なことである。現在「2号」は建設、造船などのごく少数の分野だけだが、これを製造業や宿泊、農業、漁業、外食業などの分野に拡大しようというものだ。

 

 ただし、長期化には問題が生じる。特に家族帯同の問題を解決しなければ、長期間日本に滞在はしてくれないだろう。家族帯同を認めるとしてどんな問題が起きるだろうか。

 

 一つは外国人労働者本人やその家族の「日本語習得」の問題である。日本語を習得をしてもらわなければ職場でより高い技術を習得する障害になるだけでなく、行政機関や企業、地域の周辺住民と意思疎通ができない。結果として日本社会の方が困難を抱えることになってしまう。また、家族、特に子どもたちへの日本語教育の機会確保は社会の階層固定を防ぐ意味でも非常に重要である。

自治体が日本語講座などを開くことや、通訳の配置、国際交流センターなどを設置する必要があるが、非常に残念なことに自治体ごとに財政ややる気に濃淡がある。

 

二つ目は処遇改善だ。記事によれば特定技能の平均賃金は月20万余り。技能実習の18万弱より若干高いだけである。専門家などの在留資格「高度人材」の月30万に遠く及ばない。これでは家族の呼び寄せには大きな障害がある。

また、技術の高度化のためには中長期的に活躍できるキャリアパスの整備も必要だ。記事では使いたい時だけ安価に使うのではなく、賃金、家族の処遇の改善も必要だ、とされている。

 

今回は外国人労働者の問題を拾って読んだ。外国人労働者の受け入れには感情的に反発する方も多いが、人権問題を離れても経済的にこれだけの需要がある以上、受け入れ拡大の流れを止めることはできないだろう。

 

自治体は産業政策の一環としても在住外国人の支援をより積極的に行うべきだ。そもそも日本の自治体は「産業政策」と言えば制度資金と補助金を出すばかりだったが、自治体の最も得意とするのは労働者の環境改善にある。そのことをよく理解せず、商工会などの産業団体との差異を意識せずに、政策を作っている自治体のいかに多いことか。

民間ができることは民間に任せ、雇用環境を整える政策に注力すべき時がきている。