「リスキリング」と地域社会

3月27日の日経トップに「リカードの矛盾を超えて」という記事があった。記事を要約する。

公務員試験ではお馴染みのイギリスの経済学者リカードが19世紀に唱えた「比較優位」説は自由貿易がなぜ富の増大をもたらすのかを端的に説明したものだった。より得意な国が生産し、苦手な国と貿易し合うことで、世界全体の富が増大する、と言うものだった。

20世紀の米国はその恩恵を最も享受したくにだったが、21世紀の同国はそうではない。

その原因はリカードの二つの矛盾によるものだ。

第一の矛盾は、産業の構造転換の困難さだ。グローバリゼーションにより地域の産業が、より優位の地域に移ることについては反発が起きる。不得意な産業から得意な産業に移ろうとしても容易ではない。記事ではオハイオ州の照明工場の例が挙げられていた。

第二の矛盾は失地を奪回するために国も地域も保護主義に傾きやすい。トランプ前大統領は高関税で中国製品を排除しようとし、バイデン大統領は補助金で工場を呼び戻そうとしている。

米国の調査会社の調査によれば、「貿易が雇用を生む」と答えた人は36%に留まり、政治家が選挙で保護主義に傾きやすい下地となっている。保護主義の応酬について、IMFは目下進む世界経済の分断により七兆ドル(900兆円)の損失が生まれていると試算している。

リカードの理論がかえってグローバリゼーションを停滞させている。


記事の結論はこの矛盾を解く鍵は「リスキリング」であるとしている。日本国政府提灯記事のように読めなくもないが、人材の育成に一層力を注ぐことの重要性は変わらないだろう。


諏訪地方は製糸工業から精密、そして機械工業へ転換を成功させてここまで富を蓄積させてきた。

それは、技術者だけでなく個々の従業員に至るまで、勉強と挑戦の歴史であったことを物語っていると思う。

新しい時代に何を学ぶべきなのか。その学習を支える政策にはどんなものが有効なのか?市町村にできることはないのか?商工会議所や業界団体との役割分担は?

色々言いたいことやアイデアはあるが、言う場がないのが実に残念である。