なぜドイツを理想化するのか

日本の周辺各国の経済成長に伴い軍事的、外交力的なパワーバランスが変化した。結果、自衛隊の行動の自由を拡大せざるを得ない事態に陥っている。中国と韓国は歴史認識カードの使用をさらに強化し、政府と国民の分断を図る方策を強化しているように思える。
これを受けて日本国内においては、自衛隊の行動範囲拡大のための法制度整備を進める必要が生じたところ、憲法を根拠にこれに反対する声が高まっている。中国政府が長年にわたって仕掛けてきた日本の官民分断は一定の成果を上げていると言える。

特徴的なのは、「日本は戦争責任を果たしていない」とし、ドイツと比較して政府を批判する声の多さだ。

ドイツは戦後周辺諸国と和解したのではない。同盟を結んだのだ。結果として対ソ連という共同利益を有したため、和解が進んだのだ。日本と異なり周辺国は元々が列強諸国であって、帝国主義の時代には侵略によって植民地を分けどる仲間であり、競争相手であった。無論中にはそうではない国もあり、ギリシアから先年ドイツに戦後賠償を要求する一幕があった。
一方で、日本の周辺の国はソ連を除けば列強の植民地であった。列強諸国と日本は植民地の分け取り戦争を行い、現場となった周辺地域にひどい惨禍を招いた。国として独立後は賠償を要求しようと考えるのは当然だろう。

ドイツと日本を比較するなら、ドイツと周辺国ではなく、ドイツとドイツが植民地とした国とどう和解したかである。ユダヤ人や英仏両国との和解は有名だが、中国やトラック諸島諸国、アフリカの旧ドイツ植民地に謝罪して賠償したという話はあまり聞いたことがない。学校でも全く教えられていない。そもそもどの国もドイツにとって21世紀のこの時代、軍事的脅威になっていない。

日本と全く状況も性質もが異なる国と比較しても意味がないと思う。