南相馬市からの若者たちへのメッセージ

福島県南相馬市が若者向けのポスターを作成し、市内に掲示しているとのこと。
ポスターの趣旨が他の市町村と異なり、話題となっている。

 

www.city.minamisoma.lg.jp

 

ほとんどの市町村が「いかに若者を外に出さないか」「出ていったらいかに帰って来させるか」などを政策の主軸としている。例えば「大学などの奨学金を貸与し帰郷すれば返済を一部免除する」などの、首に縄をつけるような政策である。

 

南相馬市はこれとは正反対の趣旨でこの事業を実施している。
ホームページによれば「18歳巣立ち祝い金」として、10月1日に住民票があるか養育した者が市内在住であることを要件に5万円を交付する、と言う。

 

この事業のポスターのキャッチコピーは「さあ、行っといで」。
同サイトにはこのキャッチコピーに「込めた想い」として、以下のことが書かれている。

 

>「さぁ、行っといで。」は、市内に残る人、市外に出る人、全ての18歳に向けての言葉です。
>成人の門出を迎え、新しい環境に踏み出す彼らへ「地域社会全体でみなさんを応援しているよ」という想いを込めました。
>玄関先で背中をポンと押し、送り出す実家の雰囲気を「さぁ、行っといで。」というキャッチコピーで表現しました。

 

帰郷を要求するようなメッセージを一切載せず、7組の市民をモデルに使い、それぞれの祝福の言葉を載せている。

 

自転車店経営の男性は「自分の人生なんだ。好きなようにやりな。」と、若者の成長を喜んでいる。
市立図書館の司書は「経験することを楽しんで」とアドバイスを贈っている。
JR原ノ町駅の駅員は「自分の「好き」に向かって進め」と力強く励ましている。

 

南相馬市と他の地域、どちらがまともか言うまでもない。
力のある子は東京へでも海外へでもどこまでも行って夢を追いかければ良い。
地元に残りたい人には、なんとか生きていける道を一緒に切り開く。
そしてもし、町に住みたいという方がいれば暖かく迎え入れる。

それで何がいけないのだろう。

 

近代社会の高度化は居住の自由がその基礎にあった。
そうでなければ社会は発展しなかったし、これからもしないだろう。

そんなこともわからない人に、「若者の定住促進」などと言われたくないものだ。

近年見られる「若者流出抑制策」には、そうした歴史に対する教養も知識も、それどころか人としての良識もないものがある。

 

どんなアイディアも考えるのは自由だ。だが、若者の未来を金で縛るこれら自治体の施策は、カルト宗教が脱会防止のためにしていることと何が違うんだ?

 

南相馬市のポスターの一枚に保育士たちの言葉がある。
「2011年に年長さんだったみんな。困難を、みんなは乗り越えてきた。これから何かあっても、きっと乗り越えられるからね。」

 

震災の膨大な犠牲を苦難を乗り越えて、南相馬市の人々は何かを掴んだのだろうか。