北海道旅行2

 旅行に行くと必ず地域の新聞を買うことにしている。

 全国ニュースにならない地域独自のニュースが掲載されており、記者が長年取材した価値ある記事もある。全国紙にはない新しい視野を持つことができる。

長野県に信濃毎日新聞があるように、もちろん北海道にもある。いわゆる「どうしん」と呼ばれる北海道新聞だ。掲載されている記事にの中には本州では報道のない独自の記事が比較的多い地方紙である。先の旅行中に1部買った(8月20日)が、記事がなかなか面白かったので紹介する。

 トップは道内の林業についての記事で、円安の外材価格の高騰が道内林業のチャンスになりつつあり、設備投資で製材能力の向上を図る企業の例が記事になっていた。長野県ではあまり聞かないニュースだ。

 私は北海道の林業には詳しくない。だが、長野県内の林業については以前NPOで活動していた際に県の担当者からいろいろ伺った。長野県に限らないのだろうが、山林の構造的な欠陥がその近代化を阻んでいるという。長野県をはじめ日本の多くの地域では明治以降林野が桑畑として開発された。零細農家が多かったことから一人当たりの所有地が狭く、結果として山林の土地が細切れになってしまった。蚕糸の時代が過ぎ、林業再生がもとめられる時代が来たとき、それが開発の障壁になるとは夢にも思わなかっただろう。

 近代林業には大型重機が欠かせない。導入できればかなり自動化できる。しかし、重機を山に上げるには林道が必要だ。ところが山林の所有が細切れになっているので林道の取り付け交渉が非常に複雑になってしまい、現在に至っている。さらに近年は相続されないままの山林が放置され社会問題にすらなっている。

 さて、明治以降の養蚕業の発展は日本中で見られる現象だと私は思っていた。しかし、北海道ではどうなのだろう?旅先で公立図書館を訪れ、地域史を見て回ったが「製糸業」についての記事はあまり見かけなかったような記憶がある(見落としたか?)。だとすれば、山林所有の問題は北海道にはないのではないか?実際は開拓の歴史に関係があるだろうが、無論記事にはそこまで言及はなかった。後日勉強することにする。

 

自然についての記事もあった。日高山脈のヒグマの記事だ。取材に入った方は氷河跡で何頭ものヒグマを目撃したという。「こんなに多くのヒグマに出会うことはあまりない」と記事には書かれていた。

 実は北海道での登山に憧れている。いつかやってみたいと思っているのだが、ヒグマが怖くて今回の旅行では見送った。山中で2メートルもの熊に出会ったらどうすればいいのだろう。旅行中には停車した車にヒグマが近寄り、車を揺すって食べ物をねだるかのような動画が報じられていた。まったく自然が豊かだと生き物も大きい。

 海産物についての記事もあった。高水温の影響で今年は不漁になる見通しという。また、近年は北海道近海で獲れていた魚種が減り、代わりに北海道よりも南海に棲息する魚種が上がることがあると言う。3つの海に囲まれた北海道は漁獲高も日本屈指だ。この手の話題は北海道では重要なのだろう。海のない県に住む私にはあまり想像もつかない世界だ。

 「どうしん」の他紙には無い特徴は、北海道出身者の活躍を伝える記事だ。この日の紙面にもいくつか出ていた。東京の商社で魚を加工する際に出る食品廃棄物を出汁として循環させるビジネスに取り組む若者と、南米コロンビアで日本を知る学校を設立した方の記事だ。彼らを応援するかのような記事は、遠くの家族を応援するかのようなあたたかな視線を感じる。これは北海道民らしさなのだろうか。ぜひ我が信濃毎日新聞にもこの手の記事を期待したい。

 

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