平成後期、下諏訪町は大きく衰退した。
それは肌感覚でなんとなく感じている方はいると思うが、実際数字として知っている方はどのくらいいるのだろうか。
諏訪地方統計要覧などで工業出荷額などを見るとよくわかるが、今回は所得の面から見てみたいと思う。
政策の効用などは10年単位での変化が大体の目安だが、10年前には東日本大震災があり経済的にはイレギュラーな事態があった。
そこで、便宜上平成19年との比較とする。
まずは町民の「収入」に着目する。
収入の基準は難しいが、可処分所得を基準とすることとした。
給与収入+年金収入、営業と不動産については総収入から経費を引いた実質的な可処分所得であるいわゆる「所得」を加算し、一人あたりの収入とした。
●所得別の収入の変化
1)営業所得
H19年 1,109人 18.1億円
R03年 901人 12.7億円
自営業の方は19%減少し、所得では13.4%減少した。
2)不動産所得
H19年 902人 10.7億円
R03年 714人 8.2億円
家屋、土地の賃貸収入であるが、土地の面積は変わらないのに1.5億も減少している。考えられる状況は
・土地を借りていた工場や店舗が撤退した
・家賃や土地の借り賃が賃貸料が減額した
また、不動産所得を得ている地権者が90人減少している。
私有地化が進んだのならば良いが「借り手がいなくなった」という方が妥当なところだろう。空き家が目立ってきている事実と符合する。
3の1)給与収入
H19年 11,442人 395億円
R03年 9,764人 326億円
たった10年で約70億円近く減額してしまった。
表面上だけ見て「退職者が原因である」と言い張る向きもあると思うが、一人あたりの平均収入を見ればそれだけでないことがわかる。
3の2)
H19年 3,451,481円
R03年 3,343,123円
約10万円減額となっている。
給与水準の高い企業が町内や通勤圏から減ったことなどが理由の一つであると考えられる。
4)年金収入
H19年 7,578人 105.6億円
R03年 7,828人 108.7億円
高齢化を背景に年金収入を得る方は250人ほど増えている。
今後高齢者が減少に転じるため、この収入もいずれ減少に転じるだろう。
●所得階層別増減
年金所得者以外は大幅に減じた下諏訪町だが、所得階層別ではどうだろうか。
年収300万未満
H19年 5,693人
R03年 5,821人 128人の増加
300万円以下を「低所得」として良いかどうかは議論のあるところだと思う。同一世帯に高所得者がいれば状況も全く違う。しかし生産年齢全体は減っているのにこの階層が「増加している」という事実は見逃してはならないと思う。
300万以上
H19年 3,483人
R03年 2,981人 502人の減少
なお、高所得者に分類しても良いだろうと思われる600万以上に絞ると
H19年 702人
R03年 488人 214人の減少
中間所得者と高額所得者が急激に減少したことが見て取れる。
なぜこんなことが起きたのだろうか。
なお、この期間に下諏訪町行政が行っていた主な施策を挙げると以下の通りである。
1)観光施設の建設、改築
2)スポーツ施設の建設(艇庫、健康センター、フットサル場)
3)防災公園の施設建設
4)私有建物の譲受(町内の空き家などを譲り受けた)
5)役場庁舎、小学校の耐震改修、建設
6)保育園の統廃合
若年労働者向けの政策は1つもなかったことは特筆に値する。経済団体である商工会議所は経営者の団体であるため、基本は経営者向けの支援策を実施している。棲み分けの観点から考えれば行政は雇用対策を中心に行うべきである。
しかし、実際には生産性を向上させるようなさまざまな講習会は商工会議所に全て任せており、ヤングケアラー向けの政策は一つもなかったことは驚くほかない。