空き家問題2

 

 同書の読書の続き。

 

アメリカの空き家対策の特徴は、流通性のある不動産と市場価値の低下した放棄不動産とで、取得再生の主体およびその方法を分けて考えていることにある。日本のように不動産屋と銀行、自治体の空き家バンクがそれぞれ勝手に活動する形態ではなく、契約や資金準備、保証に到るまで、専門のプレイヤーが活動している。

需要がある地域ではそうした不動産流通システムが機能している。住宅地経営組織を活用しながら地域の価値を高めるサイクルができている。

買い手、売り手が期待できない市場性の低い物件については、州政府がランドバンクに一時保有、再生、売却等の権限を付与し、財政面での支援を行い再生させている。

未利用不動産を市場に戻す主体として、2つの事例が紹介されている。

 

「コミュニティ・ランド・トラスト」

地区内の空き家や空き地を取得、管理運営し当該地区の価値を高める活動をしている非営利団体である。80年代以降増加しサブプライムローン危機以降急激に増えている。コミュニティ主導で設立されるものが多い。10人弱で運営されるものが多い。財源は再生不動産からの収益、手数料、国や自治体の補助、寄付、投資収益などである。団体の役員は3分の1が土地所有者、3分の1が再生不動産の活用に関わっていない地域住民の代表者、残りが自治体や事業者。ボストン市には土地収用権を制限付きで認められた団体もある。複数の収入源と物件取得に権限を有していることが特徴的である。

「ランドバンク」

行政が関わる非営利組織が取得し法的経済的課題を整理して市場に戻す組織である。70年代には滞納税の免除と法制度の連携が進まなかったことにより限定的な役割に終始したが、00年代には人口減少と空き家増を背景に州単位での法整備が進み「税金に滞納があり、90日以上空き家状態」にある不動産が取得の対象となり、この活動に対して39億ドルが国から地方に配分された。

 

今日はここまで。