ケインズの美人投票

 春。同僚の若い女性職員の周囲には、終業後に若い男性職員が群れをなす。あれやこれやお誘いをかけている。当然人気のある人と、そうでない人がいる。

 「新人(女性)を誘いに行く」という4月恒例の行事のたびに、「ケインズ美人投票」(Keynesian beauty contest)のことを思い出す。金融市場とは無縁の生活をしているため、この季節しか思い出さないが、「もてる者」と「もてない者」の身もフタもない格差を見せつけられ、幾分うんざりする。

 「ケインズ美人投票」とは金融市場における投資家の行動を説明したものだ。
 「最も人気のある人に投票した人に賞を出すぞ」というルールの場合は、「みんなが美人だと思う人」を推測して投票するため、自分にとっての美人に投票する人はあまりいないと推定される。従って、本当の美人が選ばれるかはよくわからない、というところが面白かった。

 この理論を勝手にふくらませると、こんな事が言えるのではないか。

 たとえば「一番美人の女の子はだれか」という命題を設定した場合、投票方法を変えると選ばれる人が変わるかもしれない。

(1)無記名で投票で選ぶ
(2)記名投票で選ぶ
(3)挙手で選ぶ
(4)飲み屋で選ぶ

 下の方へいくほど、投票者がお互いの目を意識してより無難な主張をするようになり、本当に自分が美人だと思っている人が選ばれない・・・かもしれない。男の世界は名誉と面子の世界であるから、特にそんなことが起こる気がする(←偏見です)。

いずれにせよ推測にすぎない。推測にすぎないが、一つだけはっきりわかっていることがある。誰が美人に選ばれようが、自分がその美人に選ばれる確率はあまり変動しないということだ。

 若い男性諸君。たくさん失敗をしよう。武勇伝の多い人ほどもてるわけではない。けれど、年代が上がるとそういう人を好む女性が増えてくる。「もてない者」階級から「もてる者」階級へ移動する日も近いと信じよう(たぶんね)。