失敗の本質つづき。
同書では沖縄戦も分析の対象としている。
- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08/01
- メディア: 文庫
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「敗戦したから失敗だった」というわけではもちろんない。
簡単に言えば、大本営の方針と現地の第23軍のぎくしゃくした関係が、あり得ない作戦進行上の齟齬をまねいたということである。
沖縄戦の開戦前に主力師団を台湾に引き抜いた事を契機に、大本営と現地軍の間に亀裂が生じる。その後それは調整される事無く、来襲する米軍を航空攻撃する「天号作戦」はほとんど実施される事なく、米軍の上陸を赦してしまう。航空攻撃に会わせて攻勢をとることが期待されていたが、現地軍は堅守方針を貫き、上級司令部からの飛行場奪回のための攻勢要請も実施されかけては中止をくりかえすことになった。
上級司令部からの攻勢要請は、水際作戦での要請ならば可能性はあったが、すでに米軍側が砲兵、戦車も準備万端になってから攻勢を行っても犠牲を招くばかりであったと思われる。その事を考えれば時機を完全に逸しており、また天号作戦も空手形で終わった以上、現地軍の状況を把握していればそんな指導はなされなかったのではないか。
本書では上級司令部との相互不信は作戦進行上頻繁に起こりうるものであり、これを解消しなければいけなかったが、そのための努力が全くされなかった事がお互いの恊働を不成立に終わらせ、三々五々の作戦により無益な犠牲を招いてしまったとしている。
ただ、混乱した作戦遂行の中で、失敗や矛盾はしばしば起こりうる物であり、相互の不信感を起こさないような個々人の努力が必要であった。