- 作者: 伴野準一
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2010/10/16
- メディア: 新書
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同世代ではなく、下の世代が当事者を取材して書いた本。かなりコンパクトにまとめてあるので、当時の世代がどう読むのか気になる所。
砂川闘争の経緯をこの本で初めて知った。この本に書いてあることが事実であるならば、農家の了解もなくいきなりブルドーザーで用地をならしてしまったと言う。まるでちょっと前の中国だ。中国のこのやり方を笑っている日本の留学生がいたが、何のことはない。日本人も同じやり方をしていたんじゃないか。
学生の多くは戦争に駆り立てた帝国主義に反対し、よりよい日本を作りたいと言う点においては愛国者だった、と著者は評している。この国を何とかしないとならない、という情熱にかられていたことは想像に難くない。というか、私でもそう思うだろう。
その学生たちが何故武装闘争をする必要を感じたのだろうか。
砂川闘争の経緯をこの本で初めて知った。この本に書いてあることが事実であるならば、農家の了解もなくいきなりブルドーザーで用地をならしてしまったと言う。まるでちょっと前の中国だ。(中国のこのやり方を笑っている日本の留学生がいたが、何のことはない。日本人も同じやり方をしていたんじゃないか。)
こんな反民主主義的な経過があったことを知れば、武装闘争に走った理由も理解できる。同書では触れられていないが、つい最近までこの国には戦いと死は非常に身近な存在だったのだ。その枠組み、生き方がGHQのわずか10数年の統治で変わるはずがないだろう。とすれば、学生たちの根は戦時中に通じるものがあるんじゃないだろうか、と思ったのだがどうだろう。
ところが、当局の弾圧に屈した(ように見えた)日本共産党の方針が突然変更され、当惑した学生運動家たち。まるで自分たちを切り捨て、日常の些末な活動に埋没するかのような党の方針に失望した。そして、砂川闘争に全学連が加わっていく。
団塊の世代に自民党支持者が多いのは何故か。日本共産党を毛嫌いしている人を時々見かけるのは何故か。学生運動時代、革命を信じて闘争に身を投じた学生たちを、革命を本来目指すべき日本共産党が学生たちの敵側に回ったからだ、と説明してくれた人がいた。実際に逮捕されたその方のお話は、なるほど、と頷ける物があった。
もっとも、共産党側にも言い分はあるだろう。それに、学生運動に身を投じた若者たちは、革命とは別の形で革命を成し遂げた。高度経済成長から築き上げた空前の日本の繁栄という形で。
世代を次ぐ私たちはいかにすべきなのか。火炎瓶を投じることでも、爆弾を爆発させることでもないだろう。そういうことは既に必要ない。法と制度にのっとってこの国の行く先を決める手段を既に私たちは持っている。
そういう目で見るとき、安田講堂は、彼らの革命は本当に失敗したのだろうかと思う。革命は成就したんじゃないだろうか。
私たちの世代はどうすべきなのだろう。