暑い夏の日の思い出

大学の頃、アルバイトが嫌だった。
他人と話をする自信が全くなかったため、長期アルバイトはあまりしなかった。時間がない、という言い訳をいつもしていたと思う。

友人に誘われて初めてアルバイトらしいアルバイトをしたのは、日本通運のお中元の仕分け作業だった。物流というものに初めて関心を持ったのは、この時が最初だったと思う。

朝の作業はトラックから荷物を下ろし、配達先別に分ける作業で、簡単だった。
夕方の作業が大変だった。営業所でデパートのお中元の仕事を取ったため、デパートから発送される物を送る作業だった。

作業手順はこうだ。
「コンビ」と呼ばれる車輪のついた大型のかごが行き先別にコンベアの脇に並べる。コンビニなどから集荷してきたトラックがつくと、そこからおろして行き先別に荷物を入れる。伝票に市町村コードを書き入れるのだが、いくつ暗記しているかが熟練度の差だった。

仕事のない時は配達も手伝った。エレベーターの故障した高層マンションの配達とか。狭い階段の引っ越し作業もあった。夜は伝票の入力作業も手伝った。

人とあまり話さなくていいところが気にいった。ドライバーにはいい人が多くて、気が楽だった。
仕事のできる人は他の人の作業をスムーズに進めるように全体に常に目を配っているのに気づいた。あとは黙って重くても我慢してどんどん仕事をする。意外に自分がそう言う適正があることに気づいた。初めて大人の世界で認められて、それはとてもうれしい経験だった。

ただ、一番記憶しているのは夏の暑さだ。
ひたすらに青い空。
むせかえるような武蔵野の熱い風。

夕立が降ると熱せられた地面からの水蒸気が濛々と立ち込めた。
そのにおいがとても好きだった。

営業所の若い人たちが大学OBだった。
事務をやっていた女の人が気になっていた。
だいぶ年上だったから相手にされなかったけど。


郵政で混乱が続いている。
現場は文字通り死闘だろう。頑張ってほしい。