ベンチャー企業論 つづき

ベンチャー企業の地域別投資先
 地域別のVCの投資先を見ると、東京地区への投資が集中している。産業集積が東京以外に成立していないのが一つの原因である。今回のリニア問題もそのあたりを論点にできれば若干は違う風向きになったのだろうが「土建屋の陰謀」「地方の利益誘導のせいで日本は債務がふくらんだ」というマスコミの世論操作でできあがった固定観念は、簡単には崩せないようだ。ネット世論までもがマスコミのコントロール下にあるのはちょっと驚きだ。
新規投資先としては、アジア、太平洋地域への投資が増加している。

再生・バイアウト投資へのシフトが進んでいる。VC投資の年間投融資額の8割。

ベンチャー企業の機能分類
日本において技術企画型、研究開発型ベンチャーへのリスクの取り方のノウハウが欠乏している。エンジェルやメンター、コーディネーターが非常に少なく、欧米型の実現は困難である。日本の社会に適合したVCのあり方とあわせて、人材の育成が必要である。

●VCの役割分析
戦略立案機能・・・マクロ分析、ビジネスプランの進化
精神的支援機能
営業支援機能・・・マーケティング、販路拡大
ファイナンス機能・・・資金提供、資金制作策定、ファイナンスアドバイス
人材育成機能・・・人脈拡大、経営陣の入れ替え、外部専門家
経営管理機能・・・マイルストンの管理(何を、いつまでに、どのようなコンセプトで)

●支援優先度合いの日米相違
ハイテク型、従来型の企業別分析と、アーリーステージとレイターステージ別の分析を行うと明確な違いがある。
(1)米国従来型
<重要>
戦略支援機能・・・ビジネスモデルを強固にする
営業促進機能・・・他社との資本提携、販売提携を促進する
<それほどでもない>
精神的支援機能・・・代替可能
経営管理機能(月次決算)
(2)米国ハイテク型
初期先行投資が重い傾向。デスバレーを克服する必要がある。
<重要>
資金提供機能
精神的支援機能
<それほどでもない機能>
人材はヘッドハンターの存在だけで十分、特殊な技術は特殊な人材が必要
営業支援機能、経営管理機能はコンサルタント、銀行、NPOが代替できる

(3)日本従来型
営業支援機能・・・ベンチャー企業の商品購入への意識が低い
個人、政府、大企業
暗黙の取引規制があることから、講座開設、営業、共同研究、資本提携が必要

(4)日本ハイテク型
人材支援機能・・・人材の好循環が日本にはない
社会のベンチャー企業への理解がない
リスクリターンを明確に判別できない
人材が流動的でない(優秀な人が企業に囲い込まれている)

レイターステージでは、資金は比較的確保は容易である。しかし、精神的支援機能は重要だ。アメリカは大学などでベンチャービジネスなどを学ぶ機会があり、起業家が創業する前に大企業などで子会社経営の経験を積むなどの機会が豊富にあるが、日本の場合は準備もなく起業する例が多いからだ。
創業前の事前経験の不足が日本の特徴である。大企業に雇用規制によって人材が囲い込まれていることも一つの原因ではないか。