ベンチャー企業論 アメリカベンチャー企業の歴史

放送大学テキストつづき。第5章アメリカのベンチャー企業の歴史・活躍の状況

アメリカにおけるベンチャー企業の歴史を振り返ってみると、政府との連携で始めたボストン一帯は結局は定着しなかった。独立系ベンチャーが這い上がってきたシリコンバレーは世界を席巻することができた・・・と、いう事例が挙げられている。
講師は政府との連携を部分的に疑問視しているのだろうか。斜め読みなのでよく読み切れていない。

もし、政府との連携に問題があるとすればどんなことがあるのだろう。今、アメリカも日本も一か八かの大ばくちを行っている。政府主導で経済を再建しようという試みだ。もし、政府の主導がうまくいかない理由があるのであれば、十分解析された上でやっているのだろうか。たぶん、そうじゃないんだろうな。行き当たりばったりの自民党政権に最後の貯金(「埋蔵金」)を使われてしまった日本国民涙目な話ですな。



アメリカの代表的なハイテク集積地
マサチューセッツ東部/ボストン一帯・・・ルート128
カリフォルニア北部/サンタクララバレー・・・シリコンバレ

●なりたち
MITとスタンフォード大学は、防衛関係や航空宇宙関係の政府プロジェクトを獲得、マサチューセッツ東部とカリフォルニア北部の経済の中核となる。
技術者、資材供給者が集積し、それがまた大企業が移転してくる誘引となった。

○ボストン一帯
200年前から工業化が進んでいた(19Cには技術会社があった)。40sにはエレクトロニクス企業が集っていた。
MITは政府機関との関係を築くことで大手電子機器メーカーからの資金援助を得た
カリフォルニア州サンタクララバレー
40sはまだ農業地帯。アプリコットと胡桃の栽培。小さな電気器具メーカーと加工食品販売業のみ。第二次大戦と50s60sの軍事費の大量流入で大きく姿を変えるがスタンフォード大学派新しい技術起業の設立を後押しし、地域中小企業との協力を進めた。
●資金
連邦予算が当初投入されたが、70年代から独自の発展を始める。

●危機と克服
80sに半導体メモリ市場を日本に、ルート128のミニコンピューターメーカーはPCやWSに地位を奪われた。
シリコンバレー
サンマイクロシステムズ、コナーペリフェラルズ、サイプレスセミコンダクターなどが華々しい成功をあげ、ヒューレットパッカードインテルも回復する。
○ルート128は凋落する一方となった。

アメリカのベンチャー企業発生パターン
一人当たり付加価値(付加価値÷従業員数で割る)で3つに分類
※付加価値・・・人件費、支払金利、賃借料、減価償却費、法人税、配当金、内部留保
(1)先端技術型
研究開発企画型、技術企画型
(2)雇用創出型
ソフト開発型、小売業
既存事業の変革型を取る場合が多いため、スピードと経営システムの革新性がポイント。
(3)自活型
規模の拡大を追わない。ローリスク、ローリターン。家族や少人数の友人と起業。
パートタイマーを活用した各種サービスを提供するSOHOが典型
3.大学発ベンチャーの存在
大学内のTLOの助けを駆りながら特許化し、技術ベンチャーを設立。
大学発ベンチャーは、大学の研究を商業化する有効な手段。
シリコンバレーの厚い層
スタンフォード大学、州立大学、コミュニティカレッジなどが大学研究者、経営者、エンジニア、テクニシャンなどの人材を供給。大学教員の創業が成功すると確信できる背景となっている。

代表的なものは以下のとおり。
ショックレー研究所
フェアチャイルドセミコンダクター(IC)
インテル
ショックレー半導体研究所

ゼロックスパロアルト研究所(PARC)
マウス、グラフィカルインターフェイス

第6章アメリカのベンチャーキャピタル
<歴史>
1945全米証券業協会
ラルフ・C・フランダースボストン連邦銀行総裁 設立のアイディア
ハイテク分野のベンチャー企業のリスクキャピタル供給システムが無い
アメリカ経済が衰退する!
<提言>
機関投資家の運用資産5%をVB投資へ振り向ける
MIT、ハーバード、ボストン連邦銀行、地元財界が人材と資金提供
1950s政府主導SBIC(small business investmentcompany)
1960s大企業系列のVCブーム
1970s不振「ベンチャーキャピタルの死」
1979 年金基金もVBへ(ERISA法ブレーデントマン
ルール)
1980s  PC関連 NASDAQ公開相次ぐ
・株式公開規制緩和 ディレグレーション
・税制支援
1987ブラックマンデー
1990再度活性化
バイオ、ヘルスケア、マルティメディア、テレコミュニケーション
ベンチャーキャピタルの国別投資状況>
アメリカ62億ドルが圧倒的。日本は2.3億ドル
・上位5カ国のシェアが82%
・対GNP比アメリカ0.6%、イギリス0.62%、韓国0.41%。日本は0.02%。極めて低い。

<業種別>
ITが2000年から2003年で1/6(103億ドル)に低下
替わりにヘルスケア(バイオ・医療)に51億ドル、全体の28%を占める

<ステージ別>
シード・スタートアップ 2%
1995年15%。IT関連分野で製品化がされると、後半のステージに移っていく
アーリーステージ   18%
成長期投資      54%
レイターステージ   26%
(2000年15%・・・IPO市場縮小で上場できない企業がVCから追加投資を調達)

アメリカ地域別>
シリコンバレーカリフォルニア州32%
マサチューセッツニューイングランド15%
ニューヨーク州3位
テキサス州オースチン、ダラス


<パフォーマンス>IRR内部収益率
LBO(事業部門責任者による当該事業部門の独立と新たな成長促進を支援する投資)のパフォーマンスがよく、VCファンドは良くなかった
LBOが過剰負債をもたらし企業を解体させる⇒1990前半のアメリカの銀行破綻の要因となる。
1990後半からパフォーマンス上昇(バイアウト、S&P500を上回る)
⇒過剰投資の罠へ
急激な資本流入は過熱した株式市場を制御できず、ITバブル発生と破綻を招いた
※日本はいまだに低い

<日米比較>
形態・・・日本は当初は株式会社のみ(公開5社)、アメリカは個人のリミテッドパートナーシップ
組織のあり方や制度によって、クリアしなければいけない課題が異なる。日本においてベンチャーキャピタルが成長しなかったのは、法制度の未整備にも原因がある。

投資事業組合・・・民法上の任意組合。無限責任
⇒法律改正。H10年施行 中小企業等投資事業有限責任組合
法LPSファンドに似た制度
年金基金がVCファンド投資に参入開始

インセンティブとガバナンス>
アメリカ・・・個人キャピタリストの専門家集団 利益を上げるよう努力「受託者責任」

日本・・・会社組織
ファンド出資者、VC、株主とVC、VCと投資先
3つのエージェンシー関係
★ファンド出資者の利益につながらないかもしれないことをす
る例
・VCも平行投資。比率を案件によって変える
・VCファンドを同時期にいくつも運営することで、新規ファ
ンド募集に大きなエネルギーがかかる
・投資先企業から経営コンサルティング料をVC会社が受取る
・公開の可能性の無い投資先(リビングデッド)も投資減価の
ままで引き伸ばす
・VC会社の管理料低下を回避するため、見込みの無い会社に
過去の高い株価で追加投資
・成功報酬を売却のたびに行う。トータルパフォーマンスが不
明確