医療費を巡る誤解

多くの人は「健康保険料が高い」と思っている。原因はお役人の無駄遣いだと考えている人が大半だ。ところが、健康保険に関しては実際はお役人が使う余地は無く、ほとんどそのまま病院へ行っている。そういうことは情報公開されていないので、あまり知られていない。マスコミも報じていないので知られる機会もない。
民の側の勘違いもある。社保庁が無駄遣いしていたのは「年金」であって「保険」ではない。他の予算に関して無駄遣いがあっても、このことに関しては他のものに使う余地は無い。私もそうだったが、普通の人は「健康保険」と「年金」の区別がついていないので仕方ないかもしれないが、このまま誤解を放置しておくことは危険だ。

一方で病院ではスタッフが不足している。多くの医師や看護師、医療スタッフは慢性的に超過勤務状態。看護師や女性医師に関しては、子育て中や介護中の人が復職できれば不足は促成栽培しなくても多少は供給できるはずだ。だが、その体制を整えるためのお金は「保険料」や「税」から出る。そして、大半の人は「保険料が高い」と思っており、支払いたくないようだ。

ブログなどを読んでいると「民間企業と同じようにすれば病院も効率が良くなる」と言っている人がいる。しかし、病院にも民営のものがすでにある。というか、町医者は民営である。その医者が経営が厳しいと言っているのは、「民営か公営か」という問題では無いと言うことだ。
要は病院で医療スタッフが足りない。足りないのはお金がないからだ。今でさえ足りないと言うことは、保険料が安すぎるということだ。本来はもっと高いものなのだが、安すぎた保険料に慣れたため、高いと感じるようになったのだ。

病気になるまでほとんどの人は病院のことなど気にしない。目の前に来る(高いと思い込んでいる)保険料についてしか気にしない。私たちは素人だから、仕方ないのかもしれない。だか
らいつも、保険料引き下げの圧力をかけることに熱心で、病院スタッフの悲鳴など気にも留めない。自分が病院にかかった時のことを考えない。もちろん、今病気の人たちのことだって同様だ。

とても不思議だと思うのは、こういう人たちが年金の心配をしていることだ。このまま行けば、医療が崩壊し平均寿命は下がる。年金の心配をする前にお迎えが来ることになるだろう。