中国の文化史

参考:国立故宮博物院
http://www.npm.gov.tw/ja/visiting/exhibit/exhibit_03.htm

唐から五代の時代と、宋の時代において、中国の芸術史にとって大きな転換があった。
唐から五代の時代には、騎馬民族の侵入により彼らの文化が中原の文化に溶け込んできた。唐代の陶器には騎馬民族の持ち物に見られるひもを通す穴などを設けたものを見る事が出来る。また、技術も徐々に向上し、一般庶民の間にも陶器が浸透し始める。しかし、現在の日本人が想像する「中国的」美術のデザインとは大きく異なり、とてもシンプルな風合いとなっている。理由は、技術的な問題が大きい。
市街地の景観形成などで問題になるが、新しい技術の登場がそれまでの伝統的な美的感覚を崩し、統一された街並の形成を阻害している。すなわち、技術は美的感覚に大きな影響を与える一つの要素と言えるのではないだろうか。

宋の時代には陶器が専売制を取られ、いわば国営の工房で製造がなされた。宮廷を中心に栄えた文物は、自然をテーマとした、これ以降の中原文化とは大きく異なる風合いを持っている。どちらかというと日本的で、水墨画などは日本人が見てもその美的感覚に共鳴できるものがあると思われる。

宋の時代には民間経済が成長し、民間でももっと評価されるべき様々な芸術があったが、これまであまり注目されてこなかった。現在故宮博物院で特別展が行われている「浙派」などはその一例だ。日本やアジア諸国水墨画に大きな影響を与えたにもかかわらず、宮廷とつながっていなかったというだけでこれまであまり研究されてこなかった事は実に残念と言わざるを得ない。

明、清の時代になると、コバルトなどを用いた色を付ける技術が進歩し、今の日本人が想像する中国美術が登場する。個人的にはあまり好きではないが、技術的には非常に高いものを持っているとのことだ。

今後、中華文化圏の美術がどのように進化して行くのかは不明だが、少なくもこれまでのような宮廷美術にはならない事だけは確かだ。だが、富と権力を集中させたかつてのような力に一体何が取って代わるものがあるのかどうか私にはわからない。