放送大学「イスラーム世界の歴史的展開」

イスラーム世界の歴史的展開 (放送大学教材)

イスラーム世界の歴史的展開 (放送大学教材)


第14章 イスラームの造詣文化

イスラーム芸術には神をかたどったものは無い。偶像崇拝を厳しく禁じた事による。また、人物や動物などの描写もあまり見られない。神が動物を作ると信じられたため、動物を描写する事は神と同じ行いをする事につながるからである。従って、モスクなどの建築やコーラン写本には文字、植物、幾何学的模様が使用されている。

1 文字装飾
日本では知られていないが、日本の書道に近いものがイスラム文化権には存在する。中国が「書法」を発明したごとく、イスラムでも様々な書体がつくられてきた。 日本の書道は書のみを鑑賞するが、 イスラームのそれは植物や幾何学模様とともに使われている高度な芸術である。
(1)イスラーム初期には「クーフィー書体」が用いられた。
http://levha.net/calligraphy/kufi_tn.html
(2)イブン・ムクラの功績
アッバース朝時代に6体の書体をつくった人物。
http://mphot.exblog.jp/3168523/
コーラン冒頭の「慈悲あまねく慈悲深きアッラーの御名において」をかたどった文字。中央上部にドームが象られている。

2 植物装飾
花や葉の形を様式化し、繰り返し用いるのが特徴。
イスラーム以前の古代ギリシア、ローマ、ビサンティン、ササン朝などで既に用いられていたが、イスラームが広まってから徐々に淘汰と発展が進んで現在見られる形になった。
ハタイ、ルーミー、カーネーション、チューリップ、サズがある。
(1)ハタイ
中国起源と言われる架空の花。
http://orientlib.exblog.jp/iv/detail/index.asp?s=13310704&i=201009/28/12/e0063212_2358295.jpg
(2)ルーミー
エジプト、ギリシア美術起源説と、中国、ウイグル起源説の2つがある。
(3)カーネーション、チューリップ
オスマン朝で多く用いられた。

3 幾何学模様
イスラーム世界の数学的発展が可能にした模様。

4 人物と動物描写
宗教とは直接関係しないものには、盛んに描かれて来た。宮殿の壁画や写本絵画などが代表である。

5 建築装飾
イスラーム式のデザインは、ステンドグラスやタイル、モザイクなどの建築装飾に用いられるようになり、イスラーム世界独特の様式となった。