医療格差の時代

医療格差の時代 (ちくま新書)

医療格差の時代 (ちくま新書)

なんでもかんでも格差と名付けるのが流行の今日だが、医療にも「格差がある」と言われることにな
ったようだ。

読んでみると、格差という言葉でわかり易くしているだけで、医者の立場から見た矛盾をあれこれとついている本だ。首肯出来る部分も有れば、出来ない部分も有る。

冒頭特定健診を批判しているが、これはどうも頷けない。
健康診断を呼ぼうの中心と考えているのは日本だけ、などの指摘は、当方知識が無いので「ほう、そうですか」と言わざるを得ないが、「腹囲でメタボかどうか判断するのはどうなのか」という批判は、そのとおりなのかもしれないが全国レベルで実施するとなればそれはしかたないのではないか、とも思える。だったら、地方の保険師でもできるような判断基準を示すのかと思いきや、批判するだけしておいて具体的な提案はなし。それどころか、糖尿病を減らしても別の病気が死因になるだけだから意味が無い、と言わんばかりの展開にいささか辟易した。

しかし、特定健診が健診の民営化である、という批判は、するどいと感じた。確かに、市町村が行ってきた健康診断を、各保険者に投げる訳だから、そういうことにはなる。従って医療費の削減にはならない、という指摘も、そういえばそうだ、と思った。