あずさに閉じ込められた話

先週の土曜日に東京へ行った帰り、局地的な大雨であずさが立ち往生した。
中央線では良くある話なので、個人的にはまたか、と思っただけだった。
例によってJR職員が対応に追われている。

「対応」には二種類ある。
大雨からの復旧作業。安全に乗客を送り届け、かつ遅れを最小限にとどめる作業。
もうひとつは、転機の問題をJRの問題にすり替えて、日頃の個人的ストレスを発散しようとするモンスター乗客をなだめる作業。

この日もふたつ目の作業を車内で見る事になった。

23:00、甲府で電車は止まったまま。松本の一部で局所的に大雨が降っているとの車内放送。線路の点検をしているとのこと。携帯でアメダスを見ると、塩尻と松本の境あたりだけが真っ赤になっているが、他に降雨は無いという、説明通りの状況だ。
ところが、携帯で家に電話した人が、奥さんから雨が降っていないと聞いたらしく車掌をうそつき呼ばわりして怒鳴りはじめた。ばばあの集団客が、車内販売はないのかとわめきはじめた。冷え症の女がエアコンが寒いと言ったせいで、エアコンが切られて蒸し風呂みたいになった。
後ろの方では酒を飲んだ中年の乗客が「一体何時になるんだ一体何時になるんだ一体何時になるんだ」と、馬鹿のように騒いでいる。

こうしている間にも現場は乗客を安全に届けるために線路の点検をしているのだろう。

みんな死ねばいいのに。


どうにか甲府を発車したが、雨雲が西へ移動し山梨県境に集中豪雨が降っていると言う。携帯の電源があやしくなってきたので電源を切った。小淵沢駅で軽食が配られた。あたたかいおにぎりと缶コーヒー。急遽用意したものと思われた。疲れていたので、とても助かった。

ところが、先ほどから酒を飲んでいる馬鹿な中年客が、おにぎりにコーヒーの取り合わせが悪いとわめいている。いったい何時になるのか早く教えろ、と弁当を配りにきた職員にかみついている。

もし大雨の中無理な運行をして事故に遭ったら、一番悲惨なのは乗客である。そうならないためにJRは電車を停めているのだ。大勢の乗客の命がかかっている、だから運行をとめた。プロの仕事が信じられない奴は降りろ。仮に馬鹿の要求に屈して無理な運行をして、事故を起こしたらバカどもは責任取れるのか?そもそも大雨はJRの責任なのか?

だいたいからその昔、男が食い物にけちをつけるのはみっともないと相場が決まっていた。男女平等になったら何をいっても良くなったのか?
車掌が車内放送でひたすら謝り続けている。何で謝らないといけないんだ。


目的地の駅に着いた。電車は数時間遅れだったが、駅長以下数人の駅員がホームで出迎え、乗り換えが出来なかった乗客のために交通機関を手配していた。おしゃべりに夢中で駅長の説明を無視していた馬鹿女が、タクシーを手配し終えた後で「あ、私もなんですけど」と言い出した。若い駅員が走ってタクシーの台数を変更に行く。


こんなに丁寧に対応する必要が有るのだろうか、とふと思った。