「防災士」資格教本から

防災士の資格試験を受験することになり勉強している。
第1講にこれまでの大規模災害の事例、特徴、被害規模についての解説があるが、端的に近年の災害のひとつひとつの教訓がまとめられているので、更に要約してメモしておく。

地震
1995年 阪神・淡路大震災
活断層による。倒壊や崩壊による圧死、窒息死が8割。真冬の早朝だったためほとんどの方が自宅にいたことが原因。
家屋倒壊が道路をふさぎ、倒壊した家屋からの救出、消火、物資の運搬などの復旧活動に大きな障害となった。耐震化は自分の家を守るだけでなく、ライフラインを守る意義があることが教訓として残った。
家屋の耐震化の必要性が再認識され、自治体で補助制度などが作られるようになった。

2004年 新潟県中越地震 観測史上最大2回目、震度7、M6.8
内陸直下型地震震源地中心に建物倒壊。上越新幹線脱線。魚沼丘陵等での土砂災害(斜面崩壊・地滑り・山地崩壊3791箇所)により集落孤立。全壊家屋2515,半壊4920
山古志村では天然ダムが形成され、家屋水没。決壊による下流域の水没が懸念され、砂防工事が行われた。過疎化の進む山村に社会的弱者が取り残される懸念を顕在化させた。

2007年新潟県中越沖地震 柏崎、刈羽村
全壊1319、半壊5621 死者15,重軽傷2345
老朽化した木造家屋、瓦屋根、筋交い無し 死者の内10人は高齢者
柏崎刈羽原発は大小3100あまりのトラブルが発生。その後耐震性の点検が行われていたが、11年の原発事故には間に合わなかった。

2011年東北地方太平洋沖地震
多くは書かない。津波が火災を招いている。325件。

2014年長野県北部の地震
白馬村震源、神城断層による。建物が耐雪のために頑強な作りであったため、死者は出なかった。下敷きになっても空間が確保された。夜にもかかわらず住民が現場に駆けつけ、重機やジャッキで助け出した。共助が機能したのは日頃の備えによるもの、

2015年小笠原西方沖地震
エレベーター閉じこめは14件に留まった。2009年の規制強化に負うところが大きいが、南海トラフなどでは大規模な閉じこめ雅発生すると考えられている。対策は未だ無い。

<火山噴火>
2000年有珠山噴火
日本初の噴火予知成功。噴火前に避難が完了したのは予知成功も一つの要因だが、各自治体が有珠山火山防災マップを作成してあり、それに基づいた計画的避難指示が出来たこと、住民へ周知が進んでいたため迅速に行動できたことが挙げられる。

2000年三宅島噴火
山頂部陥没、カルデラを生ずるに至った。東京都により全島民避難決定(3800人)。長期間に亘って有毒ガスが放出されたが、安全措置を講じた上で2005年に帰島が叶った。2011年に居住可能となったが、19歳以上・年2回健康診断義務づけ・脱硫装置設置義務づけ。

2014年御嶽山噴火
噴火予測が出来なかった例。登山ブームで任期の山であった。昼時で山頂に大勢人がいた。火山情報の変化は危険度を想定できず、自治体レベルで情報が止まっていた。山頂にシェルターがない山であった。
登山計画書提出が任意であったため、被害者の把握が難航した。

2015年火山活動と災害
口之永良部島(くちのえらぶじま)噴火、全島民と観光客がフェリーで避難。
箱根山噴火 ホテルキャンセルが相次ぐ
桜島 
阿蘇山 

<風水害>
2004年新潟福島福井集中豪雨災害
11箇所で堤防決壊、信濃川支流の刈谷田川や五十嵐川決壊による三条、見附市中之島町水害。河川水位の急上昇で堤防破堤。
16名死亡、床上床下浸水1万4千棟。13人が70〜80の高齢者、家屋内溺死。事前情報無し、超高齢化社会を背景。「避難準備情報」創設。
ピンポイントで想像を絶する降雨量による。1時間で88mm

2009年7月中国・九州北部豪雨災害
県、気象台から緊急情報が市役所に3回に渡って届いていたが、市役所は特養ホームに連絡していなかった。100人の入居者の内17人死亡。
特養ホームは市街地に開設することが困難。危険地域に建設されることが多い。避難態勢を事前に作っておく必要がある。

2009年台風9号に伴う豪雨災害
兵庫県佐用川決壊、死者20名。避難勧告前に支流が既に氾濫していた。避難所に向かう途中の橋がすでに冠水しており、流されて犠牲者が出た。避難所、ルートに固執せず、状況判断が必要。

2011年台風12号による災害
台風の進行が遅かった。93人犠牲。山の斜面で深層崩壊。天然ダムは対策奏功。

2012年5月 つくば市などをおそった大規模竜巻
2000棟被害。
1971藤田博士によるFスケール 国際基準による測定基準
ピンポイント予測は困難。

2013年台風18号による災害
竜巻10発生 積乱雲が長く留まる
近畿2府4県に50万世帯、120万人に避難指示・勧告が発令。指示と勧告の違いを理解できていない、避難所の場所を知らないなどが露呈した。

2013年台風26号による伊豆大島の土石流災害
伊豆大島外輪山中腹崩落、36人死亡
火山灰が水を含むと流下速度が速い土石流が発生することがある。
気象庁は16日2時に大雨情報を出したが、2時から3時の間に土石流発生。
町長、副町長不在。土石流警戒情報FAXは6時間放置された。

2014年2月大雪・暴風雪による災害
死傷者は2000人。集落孤立、鉄道足止めで乗客が車内に孤立した。道交法上の放置車両対応の重要性が認識された。
2014年8月豪雨と広島土砂災害

バッグビルディング現象とは、積乱雲が連続的に発生する現象のこと。
水分を含みにくい「マサ土」の地盤で表層崩壊が発生。土壌によって発生する災害の規模質が変わる。
都市圏が山際に拡大し市街地が斜面に接近。
土砂災害警戒情報は1:15、土砂災害は3:20、4:15に避難勧告。警戒情報を市が見落としている。「空振りでも避難勧告を発令すべき」という教訓。災害後避難所が開いていない場合は住民が自ら自宅内の山から遠い部屋、鉄筋の2階に避難するなどを呼びかけることも指摘された。
深夜に発災が予想される場合は、昼間の明るい内に警戒情報を出すことも重用。住民も「空振りでけしからん」ではなく、「空振りで良かったね」というコンセンサスを作る必要がある。
国交省有識者会議では行政の勧告を待たずに主体的に避難する住民意識、地域体制の必要性と、水害対策が他の対策に比べ遅れていること、子どもの防災教育の充実、最大級降雨の際の被害想定策定公表が必要であるとされた。

2015年9月関東・東北豪雨による災害
栃木県では50年に1度の記録的な大雨。警察、消防、自衛隊による救出は迅速に行われたが、行政の避難指示は遅れた。
常総市役所は本部の置かれた市役所庁舎が1F浸水。職員400人、自衛隊関係者200人が閉じこめられた。非常用電源が浸水し使えず、備蓄物資が600mも離れた倉庫にあったため、市庁舎内に避難してきた人たちにすぐに配られなかった。
複数のダムが特別防災操作を含め1億立米貯留していたが、洪水調節操作に専念したことで被害を軽減した。
宮城県大崎市は河川決壊を市民に伝えなかった。夜間だったためパニックを防ぐためだった、と市は説明している。
行方不明者情報を個人情報を理由に公表しなかったため、「実は避難所にいた」「行方不明者リストにない人が2名死亡していた」など食い違いが生じた。個人情報保護法の適用を見直す必要がある。

<まとめ>
地域を襲う大災害は、豪雨や豪雪など季候によるものと、地震・噴火のような長期的な地殻や断層変動によるものがある。気候によるものはある程度発災を予見することが出来るが、地震は困難である。前者は危険情報を可及的速やかに把握し警報につなげ、確実に情報伝達することで、被害の拡大を防ぐことが可能である。震災の中には行政庁などの復旧復興期における中枢となる機関が被災してしまうこともあり、平時の備えが重要となってくる。災害ごとの特性はあるが、共通事項もある。二次災害の中には被害が複合化するものもあり、第一次災害が発災した後にも注意が必要である。平時の取り決めに固執せず、状況に応じた避難も重用。