障がい者の雇用政策 

障がいと共に暮らす―自立と社会連帯 (放送大学教材)

障がいと共に暮らす―自立と社会連帯 (放送大学教材)

放送大学学部テキストから。
障害者の雇用について端的にまとまっていたので、自分なりにまとめて勉強の記録とする。

第7章 雇用の促進
ILO国際労働機関
「障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約」ILO159条約:通称職業リハビリテーション条約

職業リハビリテーションの意義は本人にあった職業に就き、継続・向上し、社会との統合を進めることにある。第一条に、

第1条 職業リハビリテーションの目的が、障害者が適当な職業に就き、これを継続し及びその職業において向上することを可能にし、それにより障害者の社会における統合または再統合の促進を図ることにある

とある。第2条にそのために定期的に政策を検討するよう原則を定めている。

1981年 国際障害者年 第168号韓国 職業・雇用の場面での国際規範

日本での法令制定
1960年 身体障害者雇用促進法
1970年 心身障害者対策基本法
1987年 職業リハビリテーションの理念と政策を打ち出す、障害者雇用促進法に改正
「身体」という言葉を排除する。
1992年 職業リハビリテーション条約批准
1993年 障害者基本法

1992年、97年、02年、05年 改正

矛盾
ノーマライゼーションの理念を追求すればするほど、地域で障害者は搾取の対象となった。
(1)労働市場の構造の特徴
大企業の閉鎖的労働市場・・・終身雇用、昇給制度、正社員のみの企業別労組、健保組合、年金
中小の流動的労働市場・・・・健保、年金の不適用、大企業との賃金格差、低賃金労働
日本の雇用はこの二つの市場が多重構造をしている。
障害者雇用もまた、この二つの市場構造の影響を受けている。雇用率制度の納付金システムの適用対象となっている障害者は、必ずしも多くないという実態がある。

(2)企業規模と雇用率制度
障害者の雇用の促進等に関する法律」による制度。一定規模(301人以上)の企業には法定雇用率以上を達成するよう義務付けられ、雇用率に満たない事業者は納付金を納める義務があったが、平成22年7月1日法改正があり201人以上の事業者に引き下げられた。これは、300人以上の統計に載ってこない事例が数多いことから、制度対象を引き下げたものである。
・法定雇用率・・・民間企業は1.8%
・ダブルカウント・・・重度障害の場合は1人で2人とカウントできる制度。重度障害のパートタイマーについては1人で1人として雇用率にカウントできる。
精神障害者・・・2005年からカウント可能になった。
・特例子会社制度・・・障害者の雇用に配慮した特別の子会社を作った場合は、親会社に雇用されている労働者であるとみなす制度。2008年統計234社。
・調整金、報奨金・・・法定雇用率を上回る場合は調整金、200人以下の会社で法定雇用率を上回っていると報奨金が支給される。

職業リハビリテーション
1960年に身体障害者雇用促進法が制定されて以降、改正を重ねるたびに雇用義務が強化されてきた。
雇用法と福祉法が背反する側面を持っている。高度経済成長期には身体障害者福祉法知的障害者福祉法が制定されたが、授産施設などは雇用制度からは離れたものになっていった。精神衛生法が87年に精神保健法となったが(精神障害者社会復帰施設の法的根拠)、こちらも上述の性質をもっていた。
労働市場の成熟と構造変化の中で、福祉制度と雇用制度の整合性、関係の構築が課題となっている。自立支援法施行以前では授産施設、福祉工場、小規模作業所、共同作業所、職親がリハ機能を持っていたが、自立支援法施行により変化しはじめている。

雇用促進政策
事業主・・・雇用率制度、雇用納付金制度、助成金制度、賃金助成、企業環境整備
障害者・・・職業能力開発、職場や職域拡大、職業開発、雇用継続制度
求人・求職・・・公共職業安定所の職業相談、職業紹介、障害者職業センターにおける職業評価、ジョブコーチ制度、職業能力開発制度の教育訓練制度の改善
一般市民・・・啓発活動も

「障害者就業支援・生活支援センター」
生活支援と就労支援の組み合わせが課題。保健、福祉と職業両面からの支援体制を作ることが目的。
精神障害者支援施策 303万人(2005年)で、雇用に結びつく準備体制を整えている病院、社会復帰施設はきわめて限られる。

政策形成も、行政実務も雇用の現場で何が起きているかをよく知る必要がある。生活支援策と労働政策が連携し始めたことは評価できるが、さらに政策の対象とはあまりなっていない中小企業や非正規雇用についても含めた雇用政策の形成が必要である。