高校の終わりの頃、なんとなく生きていくこと自体が億劫で、残りの人生はひっそりと生きていこうと思った。人とも出来るだけ付き合わず、静かに暮らしていきたい、そんな風に思っていた。
大学の頃、携帯電話を持つ人が増え始めた。アクティブな人ほど携帯を持ち、電話で打ち合わせや遊ぶ約束をしていた。それを横目に、ああいう暮しは申したくないな、などと思いながら、敢えて持たなかった。
どこか人生そのものをあきらめようとしていたのかもしれない。
が、やっぱり駄目だった。
人が生きていくとはそう言うことではないから。
社会人になって携帯を持った。あっという間に活動エリアが広がり、今では週末も各種の活動に駆けずり回る生き方になってしまった。時々、大学時代が懐かしく思う。本当は家で静かに本を読んで暮らしていたい。
でも、もうしょうがないじゃないか。走り出してしまったんだから。
今週末の予定についてのメールが届いた。後で電話がほしいんだそうだ。承知した、と簡潔に返事をする。
慌ただしい週末がまた始まった。