高校を卒業すると女の人は化ける。面影もなくなる人もいる。
30過ぎると再度変わり、きっとその先もあるのだろう。

 経験上、30歳くらいで同級会を開くと、男子がみんなひっくり返る。「失礼ですが、どちらさま?」という美人がいっぱい来る。「このおっさんは何」という男もいっぱい来る。
 誰かわからない、いい男もたまに来る。で、名前を聞いてびっくりする。たいていの場合はクラスの中で目立たなかったような人だ。

 終了後の女子禁制反省会(3次会か4次会)では「もっとゴマすっておくべきだった」「つばつけとけばよかった」「いや、俺はちょっとイイと思ってたんだけどな」「↑嘘つけ。お前は脳内エロ100%だったくせに」などなど、ぶっちゃけトークが出てくる。「実は俺はあの子が好きだった」などと言い出すやつがいる。意外な人同士が実は両想いだったことがわかったりする。

 2年くらいすると、その中の何人かから年賀状が来る。
 「私たち結婚することになりました。あなたが幹事をしてくれたおかげです。」
 「どーせ俺はいつも『幹事』だよ!なんか文句あるか!!」とか「そういえばあの二人2次会の金を払わないで途中で消えてたな・・・まさか・・・」とか・・・新年早々理不尽な怒りを年賀状にぶつけていると、その翌年くらいから子どもの年賀状が送られてくるようになる。

 経験上、自分の中に表現したいナニかを持っている女性は30過ぎたあたりからどんどん良くなっていく。

 たまに、持っていたものをいつのまにか失くしてしまう人もいる。村上春樹風にいえば。枯れた井戸の水みたいに、地中を通ってどこかへ行ってしまうみたいに。

 そういう人は、悟りを開いたみたいになってとても魅力的になる。


 年をとって思うのは、若い女の子と話すのは楽しい。
 将来30歳過ぎた彼女が獲得するかもしれない、自分の魅力に気付いていない。きっといい女になるだろう、と思いながら、彼女たちのするたわいもない話を聞いているのは楽しい。

 だが、彼女たちの30歳以後の人生を私が知ることはない。
それを知るのは、今は若くて小僧でしかないどこか見たことのない、男の子だ。

 永久に得られない姫・・・と言っては言い過ぎか。ただ、そんなことを考えていると、胸の奥が疼く気がする。

 だから、若い女の子と話すのは楽しい。

 いい女になった女性たちと話すのは大変だ。こちらも相応のいい男でなければいけないから。