地元の公立高校の中高一貫化について、反対意見をよく耳にする。
私にはメリットもデメリットもよくわからない。

先日来、ある友人の子の勉強のお手伝いをさせていただいている。
今年、地元に出来る中高一貫校の受験をするという。

中学と高校の統合については、地元でも疑問視する人が多い。
個人的にも目的と手段がずれている感じがするし、子ども達を心配する意見には頷けるものが多い気もする。

色々あってその子ともお友達だったので、引き受けることにした。
しかし、所詮私はボランティアだ。
できることは限られていた。
出題傾向を把握して分野を整理し、試験を作る先生方が考えそうなことを予想して情報提供するくらいしかできなかった。

それでも彼女はこの数ヶ月、よく勉強したと思う。
もともとよく勉強している子だったので、教えるのはとても楽だった。

何より楽しかった。
字が雑で、計算が速くてミスが多い。
かつての私そっくりで、とてもかわいかった。

試験まで1週間を切った。
彼女は見違えるほど実力をつけた。
だが、受験塾に通っている連中の方が強いだろう。
(だから私は受験が嫌いなのだ)
俺ではプロの塾講師には敵わないのが悔しい。

感想を二つ。
教える側のむなしさを知った。
どんなにその子に愛情を持っても、代わりに受けてあげることは出来ない。
試験は所詮一人で受けるものだ。
月あとは祈るしかない。
(学校の先生方はこの空しさを40人分、何年かに1回味わっているのかな。エライ仕事だと思う)

この中高一貫制度には不具合があるだろう。
「やってみなければわからない」とばかりに、大人達は凧を揚げてみた。
反対や不安視する人たちは、このことを批判する。

しかし、この件に関わった教育関係者はもう知っているだろう。
この凧の糸はもう切れている。

この制度には不具合があるだろう。
(不具合のない制度は存在しない)

どこに着地するかは本当は誰にも判らないのだ。
大人達は遙か地上から団扇であおいだり、叫んだりするしかできない。

ただ、現時点で確かに言えることがひとつだけある。
高く上がった凧を目指して、この地方の200人近い子ども達が、自分との戦いに挑んでいる。
この寒い冬の夜に、睡魔と戦いながら机に向かっている。
大半の子にとって、これが人生で最初の本格的な戦いだろう。

面接もあるというので、彼女に志望動機を聞いてみた。
「今スポーツをやっているので、部活を頑張りたい」とのことだ。

あれ?今年は1年生しかいないから、部活はあんまり良くないんじゃないかな、と疑問を口にしたところ、彼女はこう言った。

「1年生だけでも充分戦えることを見せてやりたい」


大人達の思惑など、塵芥にすぎないのではないか。