日本とアメリカは何が違うのか

昭和の時代には、標題のような問いが盛んにされていたと思う。

ところが、日本人はいつの間にかアメリカを追い越した気になり、アメリカとの違いや学ぶべき点を考えなくなってしまった。わずかに留学経験者だけが、日本の後進性を口にする事があるが、そもそも留学経験自体を重視しなくなりつつあるため、日常的には滅多に話題にならなくなってしまった。

NHKアーカイブス零戦についての番組を見た。

番組の内容は聞く価値のない物ばかりだった。
いわく「日本の戦闘機は人命軽視だったので、そのことが後で災いした」
「日本人が作った戦闘機は当初は向かう所敵無しだった」
零戦は軽量化を極限まで追い求めたので運動性が高くアメリカ人が驚いた」
「ベテランが大量に失われたため、パイロットの技量が低下し特攻隊に変わっていった」
「レーダーの登場で戦闘が不利になった」

いつものとおりお約束の内容だ。よくも飽きもせず同じ番組を何度も作るものだ。最後に近現代史が専門とか言う、なんとかという大学の先生が「文化の相違」について言及していた点は面白かったが、アナウンサーが「だから戦争はいけないんですね」という結論に導いてしまったため、お釈迦になってしまっていた。

学者の言う通り、日本とアメリカの決定的な差は色々合ったのだと思う。工業力の差はその一つだ。アメリカはエンジンを自動車を作るために作っていたが、日本にとってはエンジンとは、大型機械等の特殊なものの為だった。確かに、工業力の差は大きかった。これまでの番組で何度も何度も何度もくどいほど見せられて来た内容だ。

しかし、それでも戦争をしなければならなかったのだ。この番組にはその視点が無かった。「無益な事をした」という思い込みがあるのだろう。結果、結論はくだらない物になってしまった。

それでも戦わなければ行けなかったのだとしたら、だったら足りない工業力や人材層の薄さ、補給線の長さを補うためにはどうしたらいいのかを考える番組に何故できないのだろう。思うに、日本とアメリカの決定的な差はそこにあるのではないか。

日本人は現場の改善は得意だが、戦略を練ったり事業化をすることはとても不得手である。一方アメリカ人はこの逆である。海外の仕事をするとわかるが、アメリカ人の仕事の質の悪さに閉口する事が多い。どうしてこんなレベルの低い連中に日本は負けたのか、この部分だけを見ると全く理解出来ない。

思うに、アメリカの真骨頂は事業化や戦略を戦術に落とし込む力にあるのではないかと思う。

例えば、番組ではレーダーの登場に軽く触れていた。最後に学者が「レーダーをドイツからもらっていれば良かったのに、日本人はその事を軽視したのがいけなかった。」といつもの結論を出していたが、このことをもう少し掘り下げてみないと何故日本が負けたのか解らない気がする。
兵士の現場感覚には「敵より先に敵を見つける」というのは常識としてあるだろう。アメリカはその問題を国家レベルで組織的に取り組み、高性能レーダーを完成させた上に、戦術に織り込んでいった。しかも戦争が進行している最中にだ。
日本の兵士にももちろんそのような現場感覚はあっただろう。ところが、それは国家が組織的に取り組むべき事として認識されず、技術に反映されなかった。

この両者の差はどこから来るのか。

戦争から得ておかなければならない教訓とは、思うにそこにこそあるのではないか。アメリカと工業力が違うとか、物量軽視したのが悪かったとか、そんな幼稚園児でも解るような教訓しかえられなかったとしたら、亡くなった兵士達が浮かばれないだろう。