- 作者: 江國香織
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/05/30
- メディア: 文庫
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はてなダイアリーの「今週のお題」はプレゼントについてらしい。もらったプレゼントではなく、自分が贈ったプレゼントでもいいのだろうか。
贈ったものは、本だった。
彼女の誕生日だというのにお金がなかった。公務員試験の浪人中だったため、仕事をしていなかったからだ。本を一冊買うのがやっとだった。うす紫色のきれいな表紙のその本を彼女が前から買うかどうか迷っていたので、神保町まで冬の白山通りをテクテク歩いて買ってきた。
「迷うなら買ったほうがいいと思う。読むかどうかは別として、本を読む自由を手に入れることはとても大切だと思う」
俺はそんな偉そうなことを言ったらしい。今から思えば、どこかに書いてありそうな鼻につくような科白だ。
それなのに、彼女はそのことをずっと覚えていてくれて、二人で本屋さんめぐりをする度にその話をしてくれた。
これまでの彼女さんたちの誕生日にいろいろ贈ったけれど、これが最も記憶に残っている。
「彼女のためにもっと何かすべきだった」という苦い思い出とともに。
本当にごめん。
今、どこで何をしているか知りたいと思う。
もう二度と会うことはないと思うけど。