過去との邂逅

高校の頃、何が自分の行く手を阻み、何を考えていたのだろう。
今となってはうまく思い出せない。
砂浜に書いた文字が波に消えるように、歳月の海に飲み込まれてしまったのか。
あの頃は、忘れてしまうことが何より怖かったように思う。
自分でない他の何かになってしまう気がしたから。


子どもの頃、月に追いかけられていた。
月は常に頭の上にあり、のしかかるように迫ってきた。
10代の終わりの年、「このままの自分でいこう」と思った時から、俺は月を追いかける側になった。
みっともなく、よたよた追いかけてきた。
自分の姿を思い出すと今では恥ずかしい。
けれども、若い人が必死に追いかけているところを見ると、何故か胸が熱くなる。


若い人のすることに口を出してしまう。
おせっかいだと思いながら、そういう自分を止めることができない。
過去の自分を重ね合わせて、向き合う勇気がないからかもしれない。
実を言えば、そういう自分が嫌いだ。
第一、相手も嫌がっているじゃないか。
それでも手を出してしまう。
自分でも重症だと思う。


10代の頃のこと。
期待される自分や、あるべき自分。
なりたい自分。
理想の自分。
幾人もの自分に引き裂かれていた。
今なら分かる。焦らなくても人は一つにまとめる力を次第に身につけていく。
年月が解決することを知っていれば、あるいはもう少しましな10代が送れたのかもしれない。


それでも、まあ、何とか
今を生きている。