「障がいと共に暮らす」(放送大学)

久しぶりに勉強記録をアップする。

放送大学(学部テキスト)「障がいと共に暮らす」
自立と社会連帯

障がいと共に暮らす―自立と社会連帯 (放送大学教材)

障がいと共に暮らす―自立と社会連帯 (放送大学教材)

障がい者施策は非常に複雑にできていて、一般人にはほとんど理解不能になっている。担当の役所すら、県、市町村などなど入り乱れて、一体自分の障がいがどこの管轄かわからない状況だ。同書は放送大学の基本的なテキストなので、読み込んでみれば迷宮の一端は垣間見れるだろうと思い購入した。尚、同書に習って「障害者」は「障がい者」と極力書き直す事にするが、パソコンが勝手に障害者と変換してしまうので、変換し損ねていたら失礼する。

以下、障がい者の医療制度についての第5章をまとめてみる。

障がい者施策は、自立支援法の制定に伴い大きく変化した。しかし、同法の矛盾が指摘され、民主党政権によって再び廃止となる(見通し)など迷走が続いている。障がい者が安心して暮らせる時代はいつになったら来るのだろう。

1.根拠
憲法25条1項
国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(生存権

2.社会保障制度としての障がい者医療支援
既存の医療保険制度と、障がい者施策の医療扶助を併用する形をとっている。

※日本の医療保険制度
 共通した属性を持つ人ごとに社会保険制度を全国民に適用している。ただし、生活保護受給者など。一部に対象外な国民もいる。現在は7種の職域保険、市町村の国民健康保険、75歳以上の後期高齢者医療制度がある。給付内容は、健康保険法52条に規定されているが、市町村国保は傷病手当や出産手当のような休業補償が制度化されていない。(出産一時金とは別の制度)

3.障害者への医療保障
必ずしも所得の多くない障害者には社会保険負担が重いため、様々な支援制度が採られてきた。近年の制度改革により自立支援医療への一元化が図られた。
(1)種類
①育成医療 障害児が生活能力を得るため
②更正医療 社会経済活動への参加促進
③精神通院医療 
(2)根拠法
障害者自立支援法施行令1条による。以前は児童福祉法身体障害者法、精神保健福祉法により行われていたものを一元化。社会保険との併用、自己負担額を公費負担することが規定されている。
(3)受給手続き:自立支援法適用についての認定
 以下の3条件に基づいて適用される。
①障害認定
②所得制限
③治療などの事情

(4)支給認定障害者と行政ができること(権限)
①指定自立支援医療機関の変更(職権でできる)
②負担上限月額の変更
③医療の具体的方針の変更

(5)給付と負担
自己負担は原則1割、負担上限月
障害の程度が重度で継続的な場合は高額な医療負担が必要なので、別途負担上限が定められる。税上の扶養と医療制度上の扶養は切り離して考える。食事療養費、生活療養費は自立支援医療の対象ではないが、厚生労働省告示によりこれらを0円にすると生活保護を受給する必要がなくなる人については、0円設定もできる。

自治体ごとに自己負担額助成制度を設けるところもある。
身障1、2級、療育手帳A、障害基礎年金等級1級(長野県内は「福祉医療費受給者証」の制度があり、通院のみ医療費についての助成制度がある。障害認定を受けるなどすると、市役所などで担当部署に案内されて発行される)

(6)医療か介護か
自立支援法は医療費を、介護保険は介護療養費を扱うことで線引きしている
指定医療機関は、都道府県知事による指定。政令市は権限が委譲されている。

4 課題
医療費の支援であり、「医療」の支援ではない。本来の趣旨は「自立した日常生活または社会生活を営むために必要な医療」を支援する事だった。マンパワーの不足か?システムの機能不全か?まあ、両方だろう。

患者と言う属性からくる問題が指摘されている。医師に権利を主張したら不利益取り扱いを受けるのではないか、たいていの患者は気になってしまい、自分の主張ができない。また、医療の専門性から来る情報の非対称性も課題である。
インフォームドコンセント、カルテの閲覧・開示請求権など医師に浸透しつつあるが、医師の負担を増やすだけなら破綻するだろう。知的障がい者への理解の薄い医師などへの研修も必要との事だが、研修だけで何とかなるのだろうか。)
医療アクセスにも問題がある。物理的に行く事ができない人や、経済的な問題もある。これは、障がい者の雇用問題と関連している。

5 支給認定
「育成」「更正」「精神通院」の種類ごとに行われる。
医療機関の選定
②支給認定の有効期間
③負担限度上限額
1年以内、育成医療、更正医療は3ヶ月。障害者は変更を申請できる。職権で変更もできる。
自己負担 1割
所得ごとに上限がある
重度で継続的な場合は別途負担上限がある。
「自分で選択できる」障害者の希望を聞いたうえで指定が原則だが、希望と異なることも当然あり得る。

6 精神医療の歴史
(1)年表
明治初期までは加持祈祷
1873年明治6年「医制」制定。「てん狂院」の設立規定が設けられる。
1900年明治33年 「精神病者監護法」が制定されるが、私宅監置がほとんどのまま。
1917年大正6年 保健衛生調査会による調査結果。医療支援の必要者数が65,000人に対し、実際の入院中はわずか5,000人となっている。
1919年(大正8年)「精神病院法」制定。予算不足で設置は進まなかった。
1950年 「精神衛生法」制定。このころ、「ライシャワー事件」「クラーク勧告(WHO)」「閉鎖的、収容的な日本の病棟が批判の対象となる。
宇都宮病院事件・・看護職員の暴行で患者2名が死亡。
1987年 精神保健法に改正
任意入院、応急入院、入院時の書面による権利告知、精神医療審査会の設置
精神保健福祉士として国家資格化される
(2)現行法 精神保健福祉法
「医療および保護」「社会復帰と社会参加」「発生予防」
精神障害者の定義
例:統合失調症、精神作用物質による急性中毒、依存症、知的障害、精神病質その他の疾患、アルコール依存症覚せい剤乱用・依存者
(3)国と自治体の責務
精神保健福祉センター、精神医療審査会の設置義務、地方精神福祉審議会の設置権限をもつ
(4)医療機関、医療者について
資格要件を満たす者を精神保健指定医、研修義務付け
入院継続判定や行動制限などは人権侵害を伴うため、
常勤する指定医を置く
行動制限は人権侵害=手続き、用件を定める
(5)精神科入院医療の種類
任意入院、措置入院医療保護入院、応急入院
措置入院
自傷他害の恐れ」があると指定医が判断した場合は都道府県知事の公権力で入院させる
指定病院管理者は定期的報告を都道府県知事にする義務がある
任意入院患者についても求めに応じて報告する義務がある
入院継続について都道府県知事は精神医療審査会に審査を求める
医療保護入院
保護者の同意が必要。
③応急入院
72時間に限り、ただちに入院させる必要があれば可能。
(6)権利擁護のための規定
通信、面会、隔離、身体拘束、開放処遇について基準化
(7)「社会復帰」にむけて
施策だけでなく、社会の側の理解も必要。