「日本人は語学にむいていない」という言葉を良く聞く。実際、留学先で韓国人留学生に「日本人はRの発音が出来ない」と指摘される事があった。実際、Rは巻き舌音であり、日本語には無いため日本人は苦手としている。

しかし、その日本人のR発音のまずさを指摘した韓国人留学生達も、ある発音のまずさにてこずっていた。日本語で言う「ツ(tsu)」の発音が、どうしても「チュ(tyu)」になってしまうのだ。韓国語では「ts」と詰まる音はあるが、「ts」のあとに「u」がつく「ツ」の発音が無いからである。初学者の多くが思い違いをして「チュ」と発音していた

例えば、「辞典」を中国語で「ツー ディエン」と言う。しかし、韓国人が発音すると「チュー ディエン」になってしまう
「一回」を中国語で「一次」と書き、「イー ツー」と発音するが、韓国人留学生達はどうしても「イー チュー」となってしまう。本人達は先輩達に指摘されるまで気づかないので、「チュー」「チュー」といつまでも言っている。徴兵を終わったいかつい顔をした男子学生が、赤ちゃん言葉を使っているようで、大変失礼だがおかしくて仕方なかった。
見かねた先輩達が、「お前達、それは違うぞ」と教えたりしていたが、教室の片隅に輪になってこんな光景が見られた。
(尚、韓国語でやり取りしているので、詳細は想像である。でも、なんとなくわかるんだけどね)

先輩「ツ、ツだ。やってみろ」
後輩1「チュ。」
先輩「違う!ツだ。韓国語で何々と言うときに近い。ツ、って言ってみろ」
後輩1「チュ。」
先輩「だからさ〜。チュじゃなくてだな・・・じゃあ、お前やってみろ」
後輩2「チュ。」
先輩「違う!じゃあお前」
後輩3「チュ!」
先輩「だあああああ!」
後輩1,2,3「チュ!」「チュ!」「チュ!」・・・・(涙)

本人達は真剣なので気の毒なのだが、日本人から見るとおかしくて仕方ない。本人達は真剣なので、笑ってはいけないと思うのだが・・・・。

しかし、日本人留学生の「R」発音の問題は、もっと深刻だった。
なぜならば、「日本」は中国語で「リー ベン」と言うが、「リー」の発音は「R」発音なのだ。
と、言う事は、日本人は「日本」と中国語で言えないことになる。他の人たちをうかつに笑ってはいけない。
ちなみに、他の国の留学生で「か」と「は」の発音の区別がつかない、という人もいた。「カー」と言わなければいけないところが、何度説明しても「ハー」となってしまったり・・・所変われば色々である。
かくして、初級クラスの教室内には、国ごとに似た傾向の珍発音をする集団がいくつかある、という感じであった。