自転車の前ギアが壊れて途方に暮れていたが、なんとかタダで実家に帰ら無くてはいけない。
ヒッチハイクという手もあるが、私は男なので拾ってくれる可能性は少ないし・・・悩んでいてもしょうがないので すこし散歩がてら休憩しようと思い、自転車を止め街を歩いた。
やはり歩くしかないのかと考えはじめていたところ、丁度自転車屋を見つけた。 金が無いので修理してもらうのは無理かと思ったが、とりあえず聞くだけ聞いてみようと思い、自転車を持ち込んだ。
私 「すいませ〜ん」
自転車屋 「はい、いらっしゃい、どうしました?」
私 「いや、ギアが壊れて・・・」
自転車屋 「どれどれ、ああこれはいけませんね。解りました、直しておきましょう」
私 「あ、いや、それが、かくかくしかじかこういう訳で、長野の実家に帰らないと行けないのに金が無いんです。」
自転車屋 「え?これから長野に?自転車で?ホントに?」
私 (嘘ついてどうするんだ、と思いつつ)「とりあえず今、1000円しか無いんです。
もし、これ以上お金がかかる様なら、歩いて帰りますので、自転車預かってもらえますか?」
自転車屋 「・・・・・!ええっ!歩くの?いやあ、それは・・・」
(しばらく絶句する自転車屋のおっさん。)
自転車屋 「じゃあ、しょうがないな。タダでいいよ。どうせ暇だし。ただ、今回だけだよ。」
私 「えっ、いいんですか?それは・・・ありがとうございます!」
いいひとだ!
修理の途中、いろいろ自転車屋のおっさん(話の中から私と年齢がさほど違わない事が分かったが)は 色々話してくれた。彼も、以前自転車の旅をしていたのだそうだ。実際どこへ行ったかは言わなかったが 話の節々から旅の経験が豊富であることが伺われた。そうした経緯から私を助けようと思ったのだろうか。
修理が終わり、コーヒーまでおごってもらった。
人の親切が身にしみるぜえっ!!
のどが渇いて死にそうだったのだ。
しみじみ思った。
世の中捨てたもんじゃねえな。
親切な自転車屋さんのおかげで、小金井市を抜け、府中市に無事入る事が出来た。前ギアを外してしまったので (新しい部品を付けるとなると1週間かかるといわれた。さすがに一週間自転車屋さんの軒先に寝起きする訳には行かない) スピードが出なくなってしまったが、贅沢は言えない。
車の数がぐっと増えて来た。
歩行者も多い。
排気ガスが濃くなる。
甲州街道はもうすぐだ。