今週のお題

今週のお題」で書くと、いつも思い出話になってしまう。

昔住んでいた街に帰りたくなる。時々のことだが、休日の夕方、暑い夏の日、手持無沙汰な春の日。

埼玉県の朝霞市は大学1年生と2年生を過ごした街だ。
風が吹くと夕方の空に、武蔵野台地の火山灰土が舞い上がった。今ではその丘も住宅でびっしり覆われている。
歩いて数分で和光市境があった。バブル後、だが金利が下がる前だったので、住宅ラッシュの前だった。だからあちこちに畑や空き地、藪が残っていた。

銭湯だった。東武東上線朝霞駅の近くにある銭湯で「あずま湯」というような名前だった。私が大学在学中に廃業してしまった。もう一度行きたかったな。

駅前に牛丼屋とかつ丼屋があった。仕送りをもらうとそこで食事をした。バイトの給料が出た日はラーメン大学だった。踊るようにリズムを刻んで野菜を炒める店主のパフォーマンスがお気に入りだった。

30分ほど歩くと荒川の河川敷だった。私の住む街には流れていない、大きくて緩やかな川が流れていた。河川敷で中学生や高校生が部活の練習に勤しんでいた。こういうところで学生時代を過ごすのってどんな気持ちなんだろう。少しあこがれもした。夕方の荒川は鯉が飛び跳ねていた。湖の鯉しか知らないので、とても驚いた。流れの中で育つ鯉は身が引き締まって別の魚のようだった。

バイトしたコンビニは私が辞めてから程なくして閉店になったと聞いた。バイト先だった物流会社には、もう知っている人は誰もいないだろう。事務の女性がきれいだった。だいぶ年上だったので相手にもされなかった。一度だけ「彼氏いるんですか?」と聞いたことがある。びっくりして笑っていた。

自転車で長野の実家まで帰ったことがある。この街から新座市へ向かい、江周海道を目指した。出発した日は、今日と同じカンカン照りの夏だった。18歳だったからできたことだ。今やったら間違いなく日射病だな。

夜中に歩いて遊びに行った友人のアパートはまだ残っているだろうか。
裏の定食屋のおばちゃんは、今も元気なんだろうか。
俺の住んでいた古いアパートはもう残っていないみたいだけれど。