小規模自治体議会の存立意義

月刊ガバナンス5月号は「小規模市町村議会の展望」特集。
 昨今の市町村議の担い手不足の現況について、憂慮する声をあちこちで耳にする。
 民主主義の本当の危機とは、反民主主義勢力による攻撃によって起きるのではなく、その長所がする、あるいはその長所が短所に変わることによって起きると考えられる。
 いま、「議員は誰でも立候補できる」という長所が「議員になる義務を負わないから、立候補しない」という短所に変わりつつある。
 議会成立の要件は定数のうち6分の1を超える議員がいること。定員割れを起こせば再選挙となり、市政は停滞する。議会が住民自治の根幹であることはいうまでもない。SNSがどんなに浸透しても、議会での議論が市の将来を決する。

東京大学名誉教授大森先生の原稿から。総務省の「町村議会のあり方に関する研究会」の報告書によると、高知県大川村の「村民総会」を多くの市町村で継続的に開催することは、実際には困難と考えられることから、現行制度に対して「集中専門型議会」「多数参画型議会」の2種類を提案した。

報告書によれば小規模市町村を念頭に置き、人口1万人未満の市町村が505、全体の29%を超えることを指摘し、人口1000人以上1万人未満の市町村議員選挙で27%が、1000人未満では65%が無投票であった。平均年齢も高く、女性議員の割合が低い顕著な傾向があるとされた。

報告書では現行制度に加え、議員が専業となる集中専門型議会と、兼業議員による多数参加型議会の選択を提案している。しかし、筆者の大森先生はもし専門型を選択した場合、議員に当選した方が元の職業(農業など)を辞めなければならないとしたら、それは現実的ではないだろうとしている。ただ、現在においても大規模自治体の議員は他に仕事を持つほど余裕はない場合もあるので、一律の制度とするのは不合理だ。

このほかに、大森先生は「兼業、請負禁止の見直し」論にも触れている。小さな自治体では事業所が限られ、自治体から仕事を受注している(山村部の建設業など)事業所を除いてしまうと、村の主だった人が除外されてしまうという弊害がある。報告書では契約などの議会権限と兼業議員をパッケージとして考えているが、大森先生はもう少し柔軟であるべきだとしている。これは少し難しいかもしれない。小規模自治体に閉塞状態をもたらしてしまうかもしれないからだ。

また、住民の議会への参加について、大森先生のご意見が興味深い。議員は当選後組織化されるため、執行機関と自分たちの関係に意識が向きがちである。その一方で公聴会のような制度を通して住民と議員が意見を交わす機会を設けている自治体もある。こうした議論を通して住民が議会とは何をしているところか、どんな議論がされているのかを知ることが、新たな担い手確保に重要ではないかとのこと。

現代議会の困難さは、二元的代表制の要請がありながら、執行運営を担う行政機関が企画立案能力において圧倒的力を持つ構造に原因の一つがある。地域住民の意見を汲み取る力、生活の実情から行政施策を点検する能力が今問われている。
個人的に思うのだが、この意見は到底議員個人で担うことはできないのではないか。このあたり、どう考えられているのだろう。

月刊ガバナンス 2018年 05 月号 [雑誌]

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