心の健康と病理

新訂 心の健康と病理 (放送大学教材)

新訂 心の健康と病理 (放送大学教材)

今日は放送大学のテキスト読みの日。前々から心理学のうちの心の健康の問題に踏み込んで読んでみたいと思っていた一冊。

第4章 思春期、青年期の心の病理
思春期(puberty)とは第二次性徴がはじまり、生殖機能が備わる時期。学齢期としては女子は小3、4頃から中学まで。男子は小5、6から高1頃まで。
青年期(adolescence)は思春期と成人期の間、20歳までの間を指したり、大学終わりの22歳とする説もある。また、30歳くらいまでを青年期と捉える考え方や、いくつかに分けて考える説もある。
ただ、思春期と青年期を一括で捉えることが一般的であるようだ。精神医学学会の中には「思春期青年期精神医学会」がある。
精神科医の児玉隆治(2000)は、思春期の心理発達課題を「世代としての思春期」と呼び「3つの出会い」から理解しようとした。

児玉「3つの出会い」
(1)自己と身体との出会い
身体が自分の意図と関係なく発達する時期である。強迫(「こだわり」「とらわれ」によって身動きが取りにくくなっている精神状態)的な考え方が現れる。
(2)他者から見られる自分との出会い
人との出会いで自分を作り変える時期である。 他者の目に映る自己像の受容という課題に直面する。 日本では対人恐怖症は男子に多く摂食障害が女子に多いと言われていたが、男女差はなくなりつつある。
(3)世間との出会い
共同体の中で自己を作っていた社会が変化し、メディアなどとの関係の中で作られた自己は、鬼と渡り合えずに引きこもる事になる。社会的コンテクストの薄さは、現代社会の問題である。

高橋俊彦らは思春期と青年期の発達課題を(1)自己の対象化(2)性別アイデンティティの受容(3)自己アイデンティティの確立の3つに集約した。課題を乗り越えて折り合いを付け、試行錯誤しながら受容していく過程をエリクソンは「モラトリアム」と呼んだ。

思春期、青年期の自殺が多いと言う説があるが、それは他の死因に比べて多いということであって、他の年代(たとえば50代)の方が死因に占める自殺の総数も多く、割合も大きい。ただし、そのことは青少年期の自殺対策が不要だと言う事を決して意味しない。自殺願望を持つ同年代が少なくない事は統計上現れている。

心身症とは発症や経過に心理社会的な要因が関与する場合にそう呼ばれる。うつ病(不安障害、感情障害、気分障害)、ストレス性の過敏性腸症候群、神経性の過食拒食、PMSなどについては、心身相関への気づき(awareness)を重視した治療が行われる。
精神疾患としては、内因性精神病、統合失調症、思春期妄想症、自己臭恐怖症、躁鬱病強迫性障害解離性障害、対人恐怖症などがあげられる。

心理発達障害についてが最近クローズアップされている。ADHDアスペルガー症候群などが代表例だ。ある程度成年になってから見つかる事が多い。

薬物乱用、依存症もメンタルヘルスの問題に位置づける事が出来る。また、病気とは言えないが不登校やひきこもり、家庭内暴力などもメンタルヘルスの問題である。