イスラームとは何かつづき

イスラームとは何か
小杉泰
講談社現代新書

イスラム教」という呼称は厳密に言うと正しくない。「イスラーム」とは絶対者に帰依する事を意味しており、「教」をつけるのは多神教的な考え方である。「コーラン」は元々「クルアーン」のなまったものであり、「回教」とは「中国のウイグル族回族)が信じる宗教」という誤った見方から生まれた呼称である。

クルアーンは第3代正当カリフのウスマーンが編纂させた「ウスマーン版」以外存在しない。合致しない版をすべて廃棄させたからである。

イスラームの基本原理は、「アッラーの他に神無し」である。従って「アッラーの神」という言い方は「神の神」という変な言い方になりかねない。サウジアラビアの国旗に描かれているのはこの言葉である。
もう一つの原理である「ムハンマドは神の使徒なり」という言葉は、同じムスリム同士は水平であり、礼拝のときも順不同でならぶ。

ムスリムの義務は5つの行い「五行」に集約される。「シャハーダ信仰告白)」「サラー(礼拝・日に5回)」「ザガー(喜捨)」「サウム(断食)」「ハッジ(巡礼)」である。

マッカのカーバ聖殿は、中は空っぽの箱であり、その上にキスワと呼ばれる黒い布がかけられクルアーンの言葉が書かれているだけのモノである。

イスラームは女性の解放を行っている。生まれたばかりの娘を生き埋めにしたり、妻を一方的に離縁する習慣を批判している。このあたり、今のイスラームのイメージと異なる。一夫多妻も未亡人や離縁者との結婚を奨励しているあたり、当時の社会を知らなければ理解出来ない事情がありそうだ。

宗教学者が権威を持つのは、教義などが伝承の形で伝えられているからである。「Aが言った事を聞いたBが聞いた事をCが聞いた事をDが聞いた事を聞いた。」というような構造らしい。めんどくさいが、勝手に都合良く教義を書き換えるキリスト教より誠実かもしれない。

イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化 (講談社現代新書)

イスラームとは何か〜その宗教・社会・文化 (講談社現代新書)