- 作者: 横田茂
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2008/06/11
- メディア: 単行本
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ここ数ヶ月「過去の経済危機を分析し、教訓を導き出す」という試みをしばしば見受けるが、アメリカの50年代から60年代までの経済のありようは、日本のそれに共通する部分もなきにしもあらずだ。
1975年の財政危機を乗り切って世界の中心地として再生した(また破綻しそうだけど)。このとき、ニューヨーク市は財政破綻に直面し、ニューヨーク州の制定した「財政緊急事態法」の適用を受けて財政再建に着手する。ニューヨーク市は「FIRE」と呼ばれる「金融・保険・不動産」分野の成長を重視した。
アメリカの地方都市を襲った1975年の財政危機とは、石油価格の高騰と金融引き締めによって不動産ブームが崩壊したことから始まったという。「不動産ブームの崩壊」って、日本のバブル崩壊みたいだ。
しかし、ニューヨーク市の財政は一つの点で他の自治体と少し異なった事情を抱えている。世界の金融の中心地であり、ニューヨークのありようが原油市場、株式市場に少なからぬ影響を与えるのだ。その特殊事情を同書はこんな風に説明している。
多国籍企業の研究者であるS.H.ハイマーは国境を越えて世界に影響力を持つ現代的な意味での「世界都市」について以下のように述べている。
(1)ニューヨーク、ロンドン、パリのような世界レベルで資本調達の行える「基幹都市」、その下位にあるトロント、シンガポールのような「調整レベルの都市」ピラミッドの底辺にある「開発途上国の都市」という3層構造を持っていると指摘していた。
(2)航空機産業と電子産業の飛躍的進歩は、時間的距離が縮小し、国境を越えた都市同士の関係が拡大していくもととなったと言われた。
(3)こうした経済構造は上位の都市で生まれた消費文化のスタイルがマーケティング経路とコミュニケーション媒体を通、下位の諸都市へ「滴り落ちていく」形状を国家や民族を突き抜けた垂直的な都市構造をつくることになった。
(4)下位都市が上昇のために激しい競争にさらされる。しかし、上位都市もさらに上昇しているため相対的な地位は変わらない。底辺都市においてこのシステムから「疎外された集団」がこうしたシステムに反感を持つことは当然のことといえる。