サイレンの日(3)

昨日の続き。

長崎市内は市電で動きました。路面電車はバスとは違い、車の間をかき分けて走る舟のようで、とても面白い乗り物です。最近は再評価されていますが、当時はあちこちで廃止されていました。市電に乗って中華街へ行き、何か食べようと思いましたが予算の範囲内で食べられるものには限りがあることに気づきました。散々歩いた挙句、低予算の「長崎ちゃんぽん」を発見。無事飯にありつきました。後で調べたら結構有名な店だったらしい。名前は忘れたけど。まあいいか、うまかったしね。


さすがに、この辺りで疲れがピークにきていました。コンクリートの上に寝て旅をするのは、18歳の体力でも大変です。どこか涼しいところで一休みしよう、と考えて街を歩いているとデパートのようなものを見つけました。ふらふらと入っていくと映画館がありました。前から見ようと思っていた「紅の豚」がちょうどはじまるところです。これはちょうどいい!

・・・いや、ちょっと待て。何で長崎で宮崎映画を見なければいけないんだ?意味よくわかんないし・・・でもまあ、暑いし、疲れたし、いいか・・・と、炎天下数分の葛藤の末、しっかり見てしまいました。やれやれ、何やってたんだか。

(そんなわけで、今でも「さくらんぼの実る頃」=「長崎」です。映画はとてもよかったです。「飛ばねえ豚は、ただの豚だ!」ってなもんです。でも何で長崎で宮崎?)

・・・脱線はこのくらいにして、と、我に返り。長崎を出て、少しでも広島へ近づこうと考えました。九州を北上することにし、ごとごと電車に揺られていくと博多駅の辺りで暗くなってしまいました。時間を無駄遣いしすぎたか?とおもいましたが、一人旅の原則は「暗くなったら寝る」です。原始人みたい、という話もありますが、気にしてはいけません。大きな駅なら寝られる所があるだろうと思ったのですが・・・これがなかなか寝られる所が無いようです。うろうろしていると、制服姿のおまわりさんが何人かいました。きっと不審者対策でしょうか?なんだか重装備しているように見えます。道に迷ったらおまわりさんに尋ねるのが良いのでしょうが、野宿の場所は教えてもらえないだろうな、などと思っているとおまわりさん達が近づいてきました。私の心の声が聞こえたのでしょうか?

警「あーちょっと君。」

俺「は、はい?(何びびってんだ。怪しまれるじゃないか)」

警「パスポート見せてください」

俺「は?」

警「パスポート!Passport!わかる?」

俺「あの、え?」

警「だからさ!」

俺「すみません。日本人なんですけど」

警「日本人?あ?じゃあ、身分証見せて」

俺「身分証?そんなものないですよ(ここはソ連か?)。学生証ならありますけど」

警「なんだ、あるじゃないか。早く見せて」

・・・と、いうやり取りの後、「うろちょろしないこと」という注意を受けて、博多での野宿は断念しました。自分が不審者になってしまった(笑)。

 職務質問の第一声が何故パスポートだったのかよく解らなかったので、帰ってから友人にこの事を話したところ、「顔が日本人ではないから」と即答されました。ちなみに、新宿の歌舞伎町を歩き回っていると、今でも時々言われます。しくしく。

(ここまで来たら最後まで続けよう。つづく)