香乱記

香乱記〈1〉 (新潮文庫)

香乱記〈1〉 (新潮文庫)

前漢成立期については、司馬遼太郎が「項羽と劉邦」を書いたが、同時代を他の人物の目から見た物語。秦の圧政に耐えかねて多くの地方の有力者が挙兵したが、その中の斉の国の子孫、田氏三兄弟にスポットを当てた。

歴史物語はそこから教訓や名言を引き出すことができる。この小説もまた然り。
今回最も心に残ったのは、主人公の田横の軍師役であった藺林が、主人が力を落としているときに言った言葉。
自分より困っている者のことを思うこと。自分より弱い立場の人のために働くことは、それは正義であること。耳が痛いお言葉だった。

「嚢中の錐」の意味も初めて知った。嚢の中に紛れ込んでいても、才能があれば錐が先っぽを出すように出てきてしまう物だと言うことだ。優れた人物はどんな環境でも力を発揮することのたとえだ。

さて、私は錐になれるのだろうか。せめて釘か画鋲くらいにはなりたい物だ。