第3章 教育行財政における国と自治体の関係(放送大学大学院テキスト)

教育行政についての勉強を進めるため、放送大学大学院テキストを読み進めた。

学校教育はどこの行政機関が担当しているのか、一般にはとてもわかりにくい。国、都道府県、市町村ごとの役割の違いについて同章にまとめられていたので要約する。

 

1 戦前と戦後

戦前は国の仕事とされた教育の仕事は、戦後中央集権的な教育行政を排するために自治体の仕事となった。

戦前は官選知事が取り仕切っていたが、戦後は分権化が推進された。

 

2 機会均等

一方で憲法が規定する教育を受ける権利を実現するため、国も一定の役割を担っている。

憲法以前に教育の機会均等を達成するために、全国どこでも一定水準の教育資源が必要である。

 

3 役割の違い

(1)行政機関ごとの役割

市町村  小中学校の設置、管理、社会教育、教職員の服務管理

設備については国、県の補助はあるが「設置者負担主義」により市町村の責任である。

都道府県 「県費負担教職員制度」により小中学校の教職員給与の負担、人事、高校や特別支援学校の運営、費用負担

国    一定水準負担のための基準設定、(学習指導要領、学校設置基準、標準法)、費用負担、補助

(2)地方分権改革の影響

教育長人事は上級官庁の事前承認が必要であったが、地方分権一括法で廃止された。

2000年代に入り世界史未履修事件やいじめ対応などで文科大臣が教委に是正指示ができるようになった

分権改革により少人数学級編成が自治体の独自施策として行われるようになった。しかし、財政体力に依るところが大きい。

予算権を持つ首長のリーダーシップが重要となった。特に保守革新対立の時代が終わり、首長の介入に批判が少なくなった。政治的中立性や教育の継続性の確保が問題になっている。

市町村ごとの格差が拡大した。例えば就学援助は三位一体改革で国の補助から外れたため、格差が拡大したものの一つ。

 

4 地方自治 国と地方の関係を考える2つの軸

(1)日本の地方自治の特徴

「集権と分権」地方の意思決定を誰が行うのか

「分離と融合」自治体内でも中央の出先機関が担当する場合と、国の仕事を自治体が実施する場合(学校、旅券発行、国政選挙)

日本は融合型の地方自治制度をとっているため、役割分担が複雑で重複することがある

例:県立と市立の施設が近くに存在する

二重行政の批判があるが災害時のバックアップ機能にもなっている

責任の所在が不明確になることもあるが、新しい行政サービスをいち早く採り入れることができるメリットもある

(2)教育行政における国と地方の関係の特徴

ナショナルスタンダード実現のための制度と同時に自治体の主体性を確保するため関係が複雑である。例えば対人サービスであるためより本人に近い自治体が実施するのが望ましいが、予算規模が大きすぎるため国や県が負担、補助する仕組みになっている。

国が自治体に法に基づいて指導という関与をする(地方教育行政の組織及び運営に関する法律)。これを特例的規定、特別法的性質と呼ぶ。

これらは一定の水準を維持するメリットがあるが、自治体が受け身になりがちであり、責任の所在が不明確になる、自治体が工夫できる余地が少なくなるなどのデメリットがある。

国、県、市のラインによって統制される縦割り体質になりがちである。首長から独立していることで首長や議会のコントロールからの民主的統制が緩くなるという印象がある。(ただしこれには体系的な検証が必要)

 

5 人件費負担

義務教育費国庫負担法により三分の一を国が負担、残りを県が負担している

 

6人事、教職員

地方公務員274万人のうち教育部門が101万人、うち65万人が小中学校

人事を都道府県が行う意義は、市町村を越えることで適正配置や人事交流をはかることである。中核市には人事権の要望があるが、小規模自治体の教員確保に問題が生じるため、現時点では県費負担教職員制度が60年にわたり維持されている。

校長が市町村教委に意見申出を行い、市町村教委が都道府県教委に人事の内申を行う

任免は都道府県、服務関連は市町村の役割分担となっている