つながる沖縄近現代史(前田勇樹/古波臧契/秋山道宏 編)ボーダーインク
先日2ch創始者の西村博之氏による米軍基地反対運動への批判(中傷)事件を受けて、ずっと蔵の中にしまっておいた沖縄についての勉強を進めようと思った。
高校までの歴史の授業と報道や幾つかの事件を通して沖縄の通史はある程度勉強してきたつもりだが、まだまだ知らないことが多い。取り急ぎ現在の研究者たちが何をテーマにしているかを知るために本書を選んだ。15章と20のコラムに分けて沖縄の近現代史を
同書では沖縄の近現代を下記のように分けている。
近世琉球
近代沖縄
旧慣温存期
同化の時代
1895年日清戦争
<1945年 沖縄戦>
戦後沖縄
米軍統治時代
1952年サンフランシスコ講和条約
1956年島ぐるみ闘争
現代沖縄
1972年日本復帰
ペリー来航が日本の近代化を促し、それを契機に琉球の日本への取り込みが起こった。欧米列強によるウエスタンインパクトから始まる日本や周辺各国の近代化過程の中で、琉球王国は強制終了させられて日本の近代化に取り込まれた。琉球王国の時代が終わり日本化の時代がやってくる。
当初、置県処分による同化政策は旧来の慣習を温存するなど沖縄県民の動揺を最小限に抑えつつ進められた。日清戦争で沖縄の帰属が日本に確定すると急速な日本化が押し進められた。沖縄の人々にとって「日本人になること」が逃れ難い運命となった。
ソテツ地獄を経て海外や県外移民の時代から沖縄戦へ。沖縄戦の時代の前後で近代と現代に分ける考え方は一般的なのだろうか。多くの人命を失い戦後の米国時代へ。米国と日本の思惑の狭間で沖縄らしさを教育に取り入れることができたのも束の間、日本復帰を求めるために再び日本化の時代へ。
サンフランシスコ平和条約で米軍占領下に取り残された沖縄は復帰後も冷戦構造に巻き込まれ、基地との共生を強いられる。「島ぐるみ闘争」や「復帰運動」で本土並みの権利を得ようと声を上げ続けたことにより、今の「当たり前の沖縄」が実現している。
俯瞰して見ただけで沖縄戦以外にもさまざまな転機があったことがわかる。
同書では、体験者の数だけある沖縄戦の経験をそれぞれの視点からの語りを重ねることで沖縄戦の姿を浮き彫りにすることを同書は企図している。テーマごとに短いレポートによって構成されているため、通史としても読めるが問題意識の持てるパートからも読みやすい。
しばらくこの本を読んでみようと思う。