谷川俊太郎とI先生の思い出

小学校3年生の時の担任のI先生は、型破りな人だった。

毎日書かされていた日記を廃止し、代わりに私たちに毎日詩を書かせた。

そして手書きの学級通信に良い詩を一つ取り上げ、詩評を書いてくれた。私のような成績の良い子の詩はあまり取り上げられなかった。当時そのことがとても悔しかった。「きっと私の書く詩は子どもらしくないのだろう」と当時思っていた。だが、事実はそうではない。今ならとてもよくわかる。要するに、つまらなかったのだ。聞いてきたこと、本で読んだことを羅列したものは、詩とは言わない。

 

国語の授業は先生が一番力を入れていた。教科書そっちのけで、先生が手書きで筆写した詩人たちの詩を読んだ。室生犀星草野心平宮沢賢治谷川俊太郎の詩が多かったと思う。先生の大学の専門だったのか、それとも先生が個人的に気に入っていたのかはよくわからない。けれども、先生が本当に教えたいことなのだろうということは、とてもよく伝わってきた。

 

谷川俊太郎の「耳をすます」という長い詩を暗唱させられたのを覚えている。小学生にとって覚えることはそれほど苦労はなかった。谷川俊太郎独特のリズムの良い言葉遣いがとても新鮮だったのをよく覚えている。

 

長い無職生活を経て、ようやく働き始めてすぐに谷川俊太郎の詩集を買った。今でも本棚に置いてあり、時々読み返している。