野党嫌いという病

今回の国会で野党は非常に大きな仕事をした。それに比べ自民党の体たらくは目を覆うばかりである。しかし、国民の多くは今も野党が「うるさいだけ」だと信じている。誰も平日昼間の国会を見ていない上に、マスコミが派手なパフォーマンス以外はほとんど報道しないため知らないのは無理はない。

しかし、有権者にも大きな問題がある。

https://this.kiji.is/646556021833892961

 

上記記事中、以下のくだりが的を得ている。

>野党がどちらの道をとっても批判する。「対決」なら「批判のための批判」、「協調」なら「追及が迫力不足」と。批判する側が自らの立ち位置を変えるのだ。

 

要するに国民は自らゴールポストを動かすことによって野党の評価を必要以上に低め、意識無意識に関わらず自民党を支援してきた。そして、結果的に「野党は具体的な提案をしない」と信じたままとなった。

 

covid19対策で1人10万円の給付は野党の提案によるものだ。

当初安倍政権は「減収世帯に30万」という収入判定が実務的に非現実的な手法を主張していた。自分が対象だと「思った」世帯に窓口申請させるというクレイジーな方法を提唱していた。「世帯単位の給付ならば振込の手間が減る」とでも考えたのだろうか。

 

マイナポータルからのオンライン申請をねじ込んだのは安倍政権だ。二つの申請系統、しかもオンライン申請側は世帯の名寄せがデータでできないという致命的な欠陥があった。官邸はそんな基本的な問題点すらわからなかった。

 

コロナ対策法も安倍政権は作る予定がなかった。法的根拠なしに一体何ができるというのか。官邸に詰めている連中はそんなこともわからなかった。野党から提案のあったインフルエンザ特措法の改正を渋ったため、対策が遅れに遅れた。死ななくてよかった人がいたのではないか?

 

ほとんどの対策案は野党が先行して具体的に提案し、政権も与党自民党も後追いで追認していく形だった。もし野党の追及がなければ、我々国民は比喩でもなんでもなく、「お肉券」だけもらって終了だったかもしれない。

 

立憲民主党福山幹事長の質問中に答弁者の尾身先生に大声で答弁内容の指示をした首相に対して、福山氏が抗議した。この場面の映像を切り取って、あたかも尾身氏を福山氏が怒鳴りつけているような映像を作って流したツイッターアカウントがあった。

 

どさくさに紛れて国家公務員定年延長の審議の中に、検察幹部の定年延長の案件を紛れ込ませようとした。最も驚いたのは、野党が国家公務員の定年延長に反対しているかのような情報操作を行ったことだ。実際昼間働いていて国会を見ていない国家公務員の多くは「野党が反対している」と思っただろう。

 

公務員の人員不足については、旧民主党にも責任がある。311でこれから国家公務員の人手が大量に必要になるのにも関わらず、その年の採用を見送った。あれは無知のなせる技としか言いようがない。しかし、人員の不足の責任の大半は与党自民党にある。定数を厳しく抑制する現行の制度が原因だからだ。にも関わらず、与党は毎年大型予算を組み人手不足をさらに悪化させている。公務員定数は天地開闢以来の真理だと思っている人が大勢いるが、それは間違いだ。

 

補正予算案は10兆円の予備費を計上した。しかし「10兆円は防疫対策のため」とさせたのは、ほかならぬ野党だ。他にも数十件の主要対策案件は全て野党が先に提案している。その提案を受けて政権と与党自民党が動く形で対策が決まったのだ。

 

特例給付金の事務処理の委託先が不透明な形式になっていることが発覚した。実際受託先が不正をやっているわけではないのだろう。しかし、予算審議中の国会議員からの質問にも答えないなど、およそ税金を扱っているとは思えないような業者である。

 

安倍政権は国会を閉会してしまったが、私たちの生活は大丈夫なのだろうか。